6 Willem I.J.de Boer, et al.7は、オランダの2016年の全人口データを使用して、近隣地域の平均医療費パフォーマンス(人口の年齢と性別に調整された医療費)、近隣地域のSES及び4つのライフスタイルインジケータ(喫煙、アルコール消費、運動、スポーツクラブ会員)の関連を分析している。結果、喫煙者が比較的少なく、スポーツクラブの会員が多い地域では、平均医療費が大幅に低くなること、一方で推奨される最大アルコール消費量を遵守した人が多い地域で医療費が著しく高なること、これらの結果は、異なるSESレベルの地域内および地域間で一貫していることを明らかにしている。他方、運動ガイドラインの遵守率が高い地域の医療費は低く、この傾向はSESレベルが低い(すなわち貧しい)地域で特に大きいことを明示している。 なお、運動習慣を促すような取り組みと医療費の関係性については、我が国においても宍戸ら8によるものなどがあるが、生活習慣改善のための健康教室は、参加者のセルフケア能力、主観的健康度、客観的健康度を改善させるものの、医療費との関連性は見出せないとの結論が述べられている。 2-3.活動への影響要因 高齢者の健康的な生活の維持においては、高齢者の日々の活動が重要であることは議論の余地はないが、これらの活動に与える影響要因についての研究も散見されている。 斎藤ら9は、Japan Gerontological Evaluation Study (JAGES)プロジェクトが2010年~2012年に実施した、全国31自治体の要介護認定非該当65歳以上男女への郵送自記式質問紙調査データから103,621人を分析対象とし、高齢者の外出行動と社会的・余暇的活動における性差と地域差について分析をしている。結果、高齢者の外出頻度は大都市であるほど多く、後期高齢者でその傾向がより顕著となることが明示されている。 島田ら10は、神奈川県における介護予防健診を受診した高齢者321名(平均年齢74.0±5.5歳、男性96名、女性225名)を対象に、高齢者の生活空間の拡大に影響を与える要因 7 Willem I.J.de Boer, Louise H.Dekker, Ruud H.Koning, Gerjan J.Navis, Jochen O.Mierau, How are lifestyle factors associated with socioeconomic differences in health care costs? Evidence from full population data in the Netherlands, Preventive Medicine Volume 130, January 2020. 8 宍戸由美子, 井手玲子, 二階堂敦子, 中野匡子, 安村誠司:運動指導教室参加者の運動習慣・医療費などの変化に関する研究 —国民健康保険加入者を中心に—,日本公衆衛生雑誌,2003年,50巻,7号,p.571-582 9 斎藤 民, 近藤 克則, 村田 千代栄, 鄭 丞媛, 鈴木 佳代, 近藤 尚己:高齢者の外出行動と社会的・余暇的活動における性差と地域差 JAGES プロジェクトから,日本公衛誌,62-10,2015,pp.596-608 10 島田裕之, 牧迫飛雄馬, 鈴川芽久美, 古名丈人, 鈴木隆雄:地域在住高齢者の生活空間の拡大に影響を与える要因:構造方程式モデリングによる検討,理学療法学,36-7,2009,pp.370-376
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