3 2.コンパクトシティに関する既往研究と行政計画の整理 2-1.コンパクトシティに関する既往研究 コンパクトシティに関する研究としては様々であり、ここではその一例を挙げる。 コンパクトシティの形成手法に関する研究として、北海道夕張市を対象に、アンケート調査、ヒアリング調査を基に、5つの将来都市構造を構築し、その形成プロセスを考察している研究4及び5、広島県府中市を対象に、住民アンケートを行い、住民が好ましいと考える都市構造を把握することを目的としている研究6、豊田市を対象として、SLIM CITYモデルを用いた都市のコンパクト化を行い、どの都市にでも活用できる評価システムを構築している研究7、等がある。 また、都市計画と交通の観点からコンパクトシティを検討している研究として、2時点のPT調査データを用いて、過去の人口分布状況から3パターンのコンパクトな人口分布構造を作成し、道路の混雑度を加味した個人の自動車エネルギー消費量を推計し、人口分布構造と自動車エネルギー消費量の関係を示している研究8、大都市圏を対象とし、地域別のトリップ当たりの交通エネルギー消費量を求め、トリップ・エネルギーの分布状況と人口密度等との関係を明らかにしている研究9、地方都市を対象に、転居前後の交通公道の変化についてその実態を地区属性別に明らかにしている研究10、等がある。 本研究では、人口分布とPTに着目し、様々な将来都市構造を可視化できる「将来都市構造可視化シミュレーションツール」の開発を行うことで、行政計画で目標としている都市構造の検討を、専門的な知識を持たない市民と情報を共有しながら検討できる点に特徴がある。 4 瀬戸口剛、長尾美幸、岡部優希、生沼貴史、松村博文:集約型都市へ向けた市民意向に基づく将来都市像の類型化-夕張市都市計画マスタープラン策定における市街地集約型プランニング、日本建築学会計画系論文集、Vol.79、No.698、pp.949-958、2014.4 5 瀬戸口剛、加持亮輔、北原海、長尾あいり、松村博文:コンパクトシティ形成に向けた住宅団地集約化の相互計画プロセスと評価-夕張市都市計画マスタープランにもとづく真谷地団地集約化の実践-、日本建築学会計画系論文集、Vol.81、No.722、pp.899-908、2016.4 6 田中貴広、岩本慎平、西名大作:人口減少を背景とした地方小都市の将来の集約型都市構造のあり方に関する研究-住民アンケート調査によるシナリオ評価-、日本建築学会環境系論文集、Vol.79、No.697、pp.289-296、2014.3 7 中道久美子、谷口守、松中亮治:都市コンパクト化政策に対する簡易な評価システムの実用化に関する研究 : 豊田市を対象にした SLIM CITY モデルの応用、日本都市計画学会都市計画論文集、No.39-3、pp.67-72、2004.10 8 堀裕人、細見昭、黒川洸、自動車エネルギー消費量から見たコンパクトシティーに関する研究-宇都宮都市圏の2時点におけるPTデータを用いて-、第34回日本都市計画学会学術研究論文集、pp.241-246、1999 9 松橋啓介、大都市圏の地域別トリップ・エネルギーから見たコンパクト・シティに関する考察、第35回日本都市計画学会学術研究論文集、pp.469-474、2000 10 中道久美子、谷口守、松中亮治:地方中心都市における転居を通じた都市コンパクト化による自動車依存低減の可能性、土木計画学研究、Vol.26、no.2、pp.355-363、2009.9
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