1 1.はじめに 1-1.背景と目的 我が国の地方都市では拡散した市街地で急激な人口減少が見込まれる一方、大都市では高齢者の急増が見込まれる中で、健康で快適な生活や持続可能な都市経営の確保が重要な課題となっている。この課題に対応するためには、都市全体の構造を見渡しながら、住宅及び医療、福祉、商業その他の居住に関連する施設の誘導と、それと連携した公共交通に関する施策を講じることにより、市町村によるコンパクトなまちづくりを支援することが必要である1。 立地適正化計画では、「コンパクト・プラス・ネットワーク」の考え方のもと、「都市機能誘導区域2」、「居住誘導区域3」、「公共交通(維持・充実を図る公共交通網を設定)」が設定することで、都市計画と都市交通の両面から持続可能な都市構造の構築が目標とされている。 平成30年12月31日時点においては、440都市が立地適正化計画について具体的な取組を行っており、この内、186都市が立地適正化計画を作成・公表している(図 1-1)。 このように、すでに立地適正化計画や各種行政計画によって、目標とする将来像は描かれており、各地域に適した将来像に向けた事業・計画も進行している。 しかし、コンパクトシティを目標とし、構築していくには、行政のみならず、様々な分野の専門家、地元住民、民間企業が協力し合い、共通した将来都市構造のイメージを持つ必要がある。そのためには、各団体の相互理解・情報共有が必要であり、全方向から情報交換を行いながら、コンパクトシティの意識統一が必要になる。 本研究では、人口約40万人を有する豊田市を対象とし、都市将来像を交通動向や都市計画の分野から分析を行ったうえで、様々な将来都市構造を可視化できる「将来都市構造可視化シミュレーションツール」の開発を行い、地域特性を考慮したコンパクトシティを検討することで、将来像として共通した都市構造を持てる仕組みを模索することを目的とする。 1 国土交通省、都市再生特別措置法等の一部を改正する法律案について、2014.2 2 都市機能誘導区域:医療・福祉・商業等の都市機能を都市の中心拠点や生活拠点に誘導し集約することにより、これらの各種サービスの効率的な提供を図る区域 3 居住誘導区域:人口減少の中にあっても一定エリアに置いて人口密度を維持することにより、生活サービスやコミュニティが持続的に確保されるよう、居住を誘導すべき区域
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