22.自動車走行距離に関する既存資料・既存研究 自動車の走行距離に関する統計は、国や地方自治体の経済施策、交通施策、及び、環境施策等を策定するための重要な基礎資料となっている。代表的な調査として、自動車輸送統計調査1)や自動車燃料消費量調査2)があげられる。これらの調査において、乗合、貸切等のバス事業を行う事業所が使用する全てのバスを対象に、全数バス調査が行われている。また、その他の車種(一部、調査が実施されていない車種を除く)では、標本調査が行われており、最新の調査結果3)は、政府統計ポータルサイト(e-Stat)のホームページ上等に公表されている。 ただし、これらの調査結果で得られる車両属性の詳細は、車種としては燃料の違いも考慮して最大26車種であり、地域分類は47都道府県に留まっている。自家用乗用車の車種として、軽乗用車、小型乗用車、普通乗用の他、ハイブリット車の区分が設けられる等、環境施策への活用を考慮した改善がみられるものの、環境施策を実施する主体となる市町村レベルの走行距離は把握することができないという課題が残されている。 一方で、別の統計調査の結果を用いて、市町村別の自動車走行距離や自動車CO2排出量を推計する試みが行われている。谷口ら4)は、1987年から2005年まで過去4回実施された全国都市交通特性調査(全国PT調査)の結果を用いて市町村別自動車CO2排出量を推計し、その経年変化の分析を実施した。また、松橋ら5), 6)は、全国の市区町村別運輸部門CO2排出量とその経年的な変化要因を明らかにすることを目的として、多時点(1980年、1985年、1990年、1994年、1999年、2005年、2010年推計中)の道路交通センサス自動車起終点調査(OD調査)データに基づき、市区町村別車種別の走行距離およびCO2排出量推計を行った。 しかし、これらの先行研究においても、都市以外の地域や町村部ではサンプル数が少なく結果の信頼性が低い。全国PT調査およびOD調査の特性から調査間隔が約5年間と長いため、年度毎の経年変化を追うことができない。また、車種の細分化ができない等の課題が残されている。 そこで本研究では、自動車検査証(以下、車検証)の備考欄に記載されている「走行距離計表示値」等のデータを用いて、市区町村別や車両重量別等のこれまでの統計で得られる項目よりも、より詳細な車両属性で分類でき、かつ、高サンプル率で信頼性の高い自動車走行距離推計手法を提案することを目的とする。
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