316.まとめ 本研究では、個別統計データを活用した年間走行距離推計手法を提案した。本提案手法は、個別統計データの性質上、詳細な自動車属性で分類し、走行距離を算出することが可能な方法である。 提案手法(B法)を、自動車輸送統計調査の全数バス調査と比較した結果、個別統計データの走行距離データ欠損値や異常値を取り除くことで、精度の高い走行距離把握法となることを確認した。また、走行距離の違いは約0.54%であり、全数調査データから得られる結果とほぼ同等の値が得られることを確認できた。 さらに、車両総重量を4区分した貨物車に本提案手法を適用し、貨物車の年間走行距離の分布から、車両総重量が大きいほど走行距離が長くなること、14tを超えるような大型貨物車では、10万キロを超えるような車両も約17%も存在しているという知見が得られた。さらに、愛知県内の自家用乗用車を対象に、市別の1台当たりの年間平均走行距離を推計した結果、愛知県平均値に対して-8.7%~+19.8%の違いがあり、愛知県自動車CO2排出量を車両台数で按分し各自治体の自動車CO2排出量を算定する場合、各自治体の走行距離の違いによって、最大8.7%過大評価される自治体、逆に19.8%過小評価される自治体があり、走行距離を考慮した算定方法が必要であることを明らかにした。 本提案手法により、市町村別の車両走行距離を正確に知ることができるため、自動車CO2排出量の推定等の環境施策の基礎資料の他、国や地方自治体の経済施策、交通施策でも活用が期待される。 また、本提案手法に必要な個別統計データの利用には料金が必要であることや、推計手法が複雑であることから、個別の市町村が独自に複数車種のデータの提供を受け、年間平均走行距離を推計するのは難しいと考えられるため、国等が本手法を用いた推計を行い、結果を公表することが望ましいと考える。
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