-3- 「クルマ」への対策は、近年特に乗員を護る技術が進展し、自動車乗車中の死者数が大幅に減少を続けてきたことから、大きな効果を発揮していると言える。またペダル踏み間違えなど高齢者の運転誤操作による事故が多発する中で、自動運転の要素技術の発達による安全運転支援システム(ADAS)の普及が著しい。 「みち」への対策は、基本的な道路環境整備・維持管理が進められているが、膨大な道路延長に対して施すべき施策にかかる費用を賄うことは困難であり、整備箇所の優先順位付けに道路行政は課題を抱えている。 2-2 歩行者保護に資する道路施設対策の事例 横断歩道での安全対策としては、信号機の設置が最も効果的であると考えられるが、交通管理者にとって設置や維持管理の費用負担に加えて、交通円滑化の観点から設置が制限されることもあり、安易に実施することはできない対策と言える。比較的低廉な対策として、カラー舗装による注意喚起や路面標示が施されるケースが多々見られる。近年、新たな対策として、簡易なセンサーにより横断歩道を照らし出す仕組みの導入も見られる。また、幅員が比較的広い補助幹線道路以上の区間では、車道中央に歩行者が滞在する安全島を設置することで、歩行者に2段階で横断させるような施設整備の例も見られる。 (1)歩行者の横断意志をドライバーに伝えるシステム 歩行者が信号の無い横断歩道を渡ろうとしていることをドライバーに知らせるシステムとしては、押しボタン信号の仕組みを応用し、歩行者が歩道に設置されたボタンを押すことで電光型の横断歩道標識や横断歩道を照らすLEDライトが点灯するものがあり、北九州市八幡西区に導入されている。昨今、人感センサーを用いて歩行者を感知し、照明が点灯する仕組みの導入事例も見られる。 横浜市に所在する道路設備業者「保安道路企画株式会社」は、歩行者が押しボタンを押すことでLEDライトが点滅し、ドライバーに注意喚起する設備「ぴかっとわたるくん」を商品化しており、横浜市旭区や千葉市などが導入している。簡易な仕組みであり信号機の導入ができない(物理的・費用的)無信号横断歩道で有効なシステムであると考えられる。 ただし、独立電源を設備に組み込む必要があることや、コントロール装置等に流通品を適用することで低廉化する必要があることなど、普及拡大における課題は残されている。
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