-26- 図4-8は車両と歩行者との位置関係別(車両から見て右側からの歩行者の横断をNear-side、逆をFar-sideという)に集計したものである。全体としてNear-sideの方が、歩行者優先率が高くなっている。これは、ドライバーにとって横断しようとする歩行者を発見しやすいためである。 Far-sideでは通常立哨時(立哨1)の歩行者優先率向上があまり見られなかった事に対して、能動的立哨(立哨2)による向上が顕著であったという特徴が見うけられる。このことは統計的に有意な差は認められないものの、能動的な立哨によってFar-sideにおいてもドライバーが歩行者の横断により注意を払うようになった可能性が示唆されている。 (4)実験結果のまとめ 能動的立哨による実証実験の観測データを考察した結果、まず、無信号横断歩道で立哨活動を実施することにより、歩行者優先率は高まることが明らかとなった。立哨を実施していない9日間と立哨を実施した6日間のデータを比較すると、歩行者優先率は63.3%から70.5%に向上し、統計的に有意な差であることが確認された。 また、ハンドプレートを持ち路側に立つのみの「通常の立哨」に対して、視認性が高く「ありがとう」のメッセージを掲載した謝意プレートを持ちドライバーにアイ・コンタクトを取り会釈等で謝意を伝える「能動的」な立哨では、統計的に有意な差ではないものの歩行者優先率が67.7%から73.4%に向上しており、能動的立哨の方が、効果が高いことが示唆された。 歩行者と車両との位置関係別に見ると、通常時に歩行者優先率の低い Far-side の状況において、能動的立哨時の歩行者優先率向上が比較的著しく、また事後調査時の低下が僅かであり、能動的立哨が効果的である可能性が示唆された。 効果の継続という視点では、「能動的な立哨」の翌週は歩行者優先率が低下しているものの、事前および中間調査時よりも若干高い値(統計的に有意な差は認められない)であり、通常立哨よりも効果が持続する可能性があることに期待される。
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