61 6-2 交通安全に係わるビッグデータの活用方向性 本調査研究による分析結果を踏まえ、豊田市における交通安全に係わるビッグデータの活用方向性を考察した結果を下記の通りである。 1)プローブデータの活用について ヒアリング調査では、豊田市では、カラー舗装や交差点改良による追突事故の削減効果を把握するにあたり、自動車プローブデータを用いた検討を実施している。一方で、本調査研究の第2章に整理した国内地方自治体では、民間プローブデータを活用し、交通事故対策を積極的に推進している事例(埼玉県、大阪市)は参考となる。また、現段階で、普及が進んでいるETC2.0インフラの整備を通じたプローブデータを活用することが望ましく、特に生活道路における車両通過速度実態の把握及びそれを踏まえた車両速度の抑制対策の検討に活用することが期待されている。 2)交通事故データの公表について 豊田市では、交通事故の多発個所を毎年発行している小雑誌「とよたの交通事故」にて掲載している。内容は過去5年間の交通事故データを用いて、事故件数が最も多い信号交差点を整理した結果である。一方で、国内地方自治体の先進事例をみてみると、インターネットを通じて、交通事故多発箇所公表の動きも進んでおり、それらの事例は豊田市の参考となる。具体的には、豊田市が一般市民に向けた地図情報サービスを提供するためのHPである「とよたiマップ」に、交通事故の多発個所を公表することが望まれる。また、本調査で整理した長期間にわたる豊田市の交通事故データの公表検討も望ましい。これによって、一般市民が交通事故の多発個所を簡単に把握することで、事故防止につながる効果があると考える。 3)市役所と研究所の道路基盤データの統一 豊田市では豊田市総合GISシステムを用いて、市役所内の関係部署において、同様な道路基盤データを共有していることをヒアリング調査で明らかにした。ただし、この基盤データは研究所が保有している市販のデジタル道路地図データと異なる可能性がある。これによって、交通安全に係わる研究所の自主研究成果は豊田市における交通事故対策を検討する際に、基礎資料として活用する限界がある。例えば、本研究では整理した豊田市の外環状線+α地域における速度規制データは研究所が保有しているデジタル道路地図データをもとに作成したため、豊田市の関係組織に提供しても、うまくマッチングできない可能性がある。このため、今後の方向性としては、豊田市の道路管理部門は道路基盤データ(随時更新)を研究所に提供し、研究所は自主研究でも同様な道路地図データを使うことが望まれる。こういったデータ共有の仕組みの構築を通じて、研究所の自主研究成果は豊田市の関連施策提言にもっと活用できると考える。
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