交通安全に係るビッグデータを活用するためのデータプラットフォーム構築の試み
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49 4-4 小括 本検討により得られた成果を以下に整理する。 (1)交通事故件数・死亡者数推定モデルの構築 一般的に入手可能な社会指標、利用交通手段、自動車保有台数を用いて、交通事故件数・死亡者数を推定するモデルを構築した。都市の行政単位ごとに構築し、大規模都市、村を対象とする推定モデルは一定程度の精度が期待できることがわかった一方、市、町を対象とするモデル、特に死者数を推定するモデルの精度が低いことがわかった。 (2)交通安全力の算定 構築した交通事故件数推定モデルを用いて、大規模都市の事故件数、および死者数の交通安全力を算定した。結果、事故件数では新潟市、死者数では八王子市の交通安全力が最も高いことがわかった。また、豊田市は「交通安全力が高いが、事故のランクが低い(事故が多い)」に該当することがわかった。 今後の課題として、交通安全力は、実測値と推定値の差である「残差」であることから、その残差が生じる理由について、より深く検討を進めていく必要がある。特に、残差の大きい都市(交通安全力が極めて高い、もしくは極めて低い)に焦点をあて、発生している事故の傾向、都市構造などの両者の比較分析を通じて交通安全力の理解を高めることが本指標をより有効に活用していくうえで極めて重要であるだろう。 また、今回の検討では、大規模都市、村などで一定の精度が期待できるモデルが構築できたものの、市、町では精度の期待できるモデルの構築ができなかった。今回の検討では、事故件数、死者数などの応答変数の値の大きさが残差に大きく影響を与えている傾向が確認できたことからも、モデル構築における自治体の分類方法に更なる検討が必要になるだろう。

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