42 4-3-6 交通安全力の検討 上述の結果を踏まえ、ここでは、モデルの解釈上、精度な課題が最も低い大規模都市に限定し、交通安全力を算定した。使用するモデルは重回帰モデルである。結果を表 4-18、表 4-19に示す。 事故件数において最も交通安全力が高いと算定された自治体は新潟市であり、推定事故件数と実際の事故件数の差は-2,749件であった。本モデルの解釈によれば、新潟市では、現在発生している事故件数(1,822件)の2.5倍以上発生していてもおかしくはないといったことを意味する。対照的に、交通安全力が最も低いと算定された自治体は福岡市であり、推定事故件数と実際の事故件数の差は+3,518件であった。本モデルの解釈によれば、福岡市は、現在発生している事故件数(10,234件)の2/3程度の件数であってもおかしくはないといったことを意味する。 死者数において最も交通安全力が高いと算定された自治体は八王子市であり、推定死者数と実際の死者数の差は-8人であった。本モデルの解釈によれば、八王子市では、現在発生している死者数(3名)の3.7倍以上発生していてもおかしくはないといったことを意味する。対照的に、交通安全力が最も低いと算定された自治体は神戸市であり、推定死者数と実際の死者数の差は+17人であった。本モデルの解釈によれば、神戸市では、現在発生している死者数(42名)の6割程度の死者数であってもおかしくはないといったことを意味する。 次に、表 4-20に一般的に用いられる事故数のランクからみた特徴的な自治体を整理した結果を示す。ここでは、(1)「交通安全力・事故ともにランクが高い(事故が少ない)」、(2)「交通安全力が高いが、事故のランクが低い(事故が多い)」、(3)「交通安全力が低いが、事故のランクが高い(事故が少ない)」、(4)「交通安全力・事故ともにランクが低い(事故が多い)」といった4象限で主にその傾向が強い10の自治体を選定している。 (1)「交通安全力・事故ともにランクが高い(事故が少ない)」に該当する自治体は、事故件数/死亡者数が少なく、交通安全力も高い、交通安全からみて理想的な地域である。(2)「交通安全力が高いが、事故のランクが低い(事故が多い)」に該当する自治体は、これまでの件数等による評価軸では課題のある地域としてみられる場合が多いが、他地域との条件を踏まえると実際は件数、死者数が少ない地域である。(3)「交通安全力が低いが、事故のランクが高い(事故が少ない)」に該当する自治体は、これまでの件数等による評価軸では課題のない地域としてみられる場合が多いが、他地域との条件を踏まえると実際は件数、死者数が多い地域である。(4)「交通安全力・事故ともにランクが低い(事故が多い)」に該当する自治体は、事故件数/死亡者数が多く、交通安全力も低い、交通安全からみて最も課題のある地域である。 (3)、(4)に該当する自治体は、交通安全力の解釈からすると、事故削減に向けた改善の余地が大きい自治体である。特にこれまでは交通安全上の課題の低い地域として認識されてきた(3)に該当する自治体にとって、本指標は交通安全向上の機運を高めるきっかけとなることが期待される。該当する自治体も特徴的であり、事故件数では、主に大阪府の自治体が、死亡者数では東京都の自治体が選定されている。
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