33 7.おわりに 7-1.本研究のまとめ 本研究では、近年の立地適正化計画の拠点のような都市機能の地理的な集約による医療、銀行、買い物という3つの複数の都市機能の利用を考慮してアクセシビリティを評価し、アクセシビリティの低下を防ぐための対策を検討した。その結果以下のことを明らかにした。 ① 最寄り施設までの平均距離と巡回距離を比較した結果、都心から離れた山間部のみならず,都心の周辺部でもギャップが大きい場所が存在する。このような地域は平均最寄り距離であれば相対的に利便性が高い地域として評価されるが,実際に複数の施設を利用する際には不便を感じる可能性がある。 ② 巡回移動において、交通手段によるアクセシビリティの違いを把握するため、自家用車、送迎、公共交通の3つの移動パターンを想定して移動時間を比較した結果、現在の居住地の約17.5%は、公共交通による移動でも約36分以内に3つの施設を巡回することができ、全人口の半分程度がこの地域に居住している。 ③ 自家用車及び公共交通の両方のパターンにおいて不便である地域は34.4%であり、全人口の4.6%が居住している。自家用車による移動は便利であるものの、公共交通による利用が不便である地域(公共交通が相対的に不便である地域)は、居住地の48.9%を占めており、44%人口が居住している。 ④ 公共交通が相対的に不便である地域の中では、「路線網による不便」の地域がほとんどであり、約20%の人口が居住しており、路線網の調整による利便性の向上が考えられる。また、「施設分散による不便」がある可能性が高い地域は、山村部のバス路線の近くに多く分布していることが分かる。これらの地域では、施設を集約させて新しい拠点を作ることにより、利便性の向上が期待でき、「小さい拠点」の候補地として考慮することも考えられる。 ⑤ 施設が廃止になった場合における不便度を、公共交通利用不可人口の増加、移動時間の増加(総和と最大値)で評価し、施設の重要度として評価した。その結果、郊外立地しており、周辺に他の店舗がない立地では、公共交通利用不可人口と移動時間増加の最大値が大きく、交通結節点では、移動時間増加の総和が大きいことが分かった。 ⑥ バス路線の重要度の分析結果、多くの施設を経由し、かつ都心まで乗り換えせずにアクセスできる路線の利用者が多い。また、代替路線がない路線の場合、廃線による影響が大きく、今回の分析では、「高岡ふれあいバス」が最も影響が大きい路線として分析された。 本研究で提案した手法により、持続的なアクセシビリティのモニタリングと施設及び公共交通網再編における基礎データの提供ができると考えられる。
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