立地適正化を見据えた豊田市の人口動態に関する基礎的調査研究
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524.おわりに 4-1.本研究のまとめ 本研究では、新規居住場所の違いによって、世帯と⾏政のそれぞれにどのようなメリット・デメリットがあるのかを総合的かつ定量的に評価することを⽬的として、次の検討を⾏った。 第2章では、豊⽥市の⼈⼝動態と都市を取り巻く状況を分析・整理した。豊⽥市のまちの成り⽴ちを確認した。豊⽥市では今後も暫くの間は⼈⼝が増加すると⾒通されるなかで、「都市機能の集積及び集約、ゆるやかな居住誘導」(第8次総合計画)を⽬指しているが、スプロール的な宅地化が続いているとの報告もあることを確認した。検討中の都市計画マスタープランにおいては居住誘導拠点などが提案されており、これらの拠点への居住誘導が進められると⾒通される。 ⼀⽅、市外への転居理由のひとつに地価が⾼いことが指摘されており、⾜元の地価の推移をみても上昇基調にある。拠点周辺の⼟地が、地価などの⾯で転居希望者のニーズに合致するかどうかが居住誘導を進める上での鍵となることを確認した。 第3章では、居住地の違いによる世帯の家計や⾏政の財政に及ぼす影響を検証した。その結果、市街化調整区域に⽴地することの評価が⾼い結果となったが、これは線引き制度が存在するがゆえの結果であり、市街化調整区域における開発に関する制度を適切に運⽤し、無秩序な開発を適切に制御する必要がある。 市街化区域に限定すると、都⼼では交通費⽤の差(公共交通利⽤を前提とすること)によって評価が⾼いことから、都⼼に居住する上で⾃動⾞を保有することは評価を⼤きく下げる要因となることを⽰唆している。同様に、居住誘導において⾃動⾞を保有せず公共交通利⽤を前提とした暮らしを選択することは、評価をさらに⾼めることになる。 こうした結果から、「ゆるやかな居住誘導」を推進する施策の⽅向性として、1)居住誘導区域における鉄道利便性の確保、2)都⼼居住を増やすための促進費を提案した。 4-2.今後の課題 本研究の検証では、公表されている既存統計データや、豊⽥市より提供いただいたデータを⽤いている。公表データはデータの粒度が荒いために、今回の検証では地域分類で差がなかった指標が、詳細なデータを⽤いると地域分類間の差を評価できる可能性がある。今後、政策実施の検討の際にさらなる検証が必要となる場合は、より詳細なデータで評価を⾏うことが望ましい。 また、本研究では取り扱わなかったが、⽣産緑地地区の問題がある。2022年に⽣産緑地の指定の期限を迎える⼟地が全国で8割存在する。2022年以降に⽣産緑地の指定期限切れを迎えると、不動産市場に⼤量の宅地が供給される可能性もある。⽣産緑地の⾏⽅を注意深く⾒守る必要がある。

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