立地適正化を見据えた豊田市の人口動態に関する基礎的調査研究
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353-2.検証の特徴 (1)「撤退または集約」か「拡⼤の抑制」か 都市の集約や市街地拡⼤抑制に関する研究は、先に整理した研究以外にも複数存在する。例えば林ら34)は、⽣活環境を計測するためのQOL指標を定義し、社会資本整備による⽣活環境の変化を評価している。社会資本としては東京〜⼤阪を結ぶ超⾼速鉄道を想定し、⼤阪市、名古屋市、東京都区部のQOLの変化を評価している。 また、2018年1⽉に開催された第41回都市計画セミナー35)では、⽴地適正化計画策定の実務を担当した⽅々から、都市の集約に対する住⺠からの激しい反発を経験したとの報告があった。居住誘導という強制ではない施策に対してでも、かなり激しい反対意⾒がでたとのことである。 そこで本研究では、すでに住まいを構えている⼈に対するアプローチではなく、新規居住者に対して働きかけるアプローチを取る。 (2)評価の対象(都市か世帯か) 集約型都市構造等の実現による効果について評価する研究では、都市や地域全体を対象としたものは数多く存在する。⾏政計画に対する評価を⾏う上では、こうしたアプローチは有効と⾔えるだろう。しかし、実際に居住するのは⼈(世帯)であることから、世帯に着⽬した検討を⾏うことも重要と考える。 しかし、世帯の家計に着⽬した研究は多くない。そこで本研究では、世帯の家計と、世帯が⽴地することにより影響を受ける⾏政の収⽀に着⽬する。 (3)検証の特徴 ⾏政だけでなく個⼈にも着⽬し、社会全体で共通の価値観が共有されている経済的な指標を⽤いて、⽴地場所(都⼼と郊外等)の違いによる「家計の⽀出」や「⾏政の歳⼊及び歳出」に及ぼす影響を検証することに特徴がある。 34) 林・⼟井・杉⼭: ⽣活質の定量化に基づく社会資本整備の評価に関する研究, ⼟⽊学会論⽂集, No.751/Ⅳ-62, 55-70, 2004. 35) 公益社団法⼈⽇本都市計画学会: 第41回都市計画セミナー コンパクトシティのネットワークを考える 資料, 2018.

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