立地適正化を見据えた豊田市の人口動態に関する基礎的調査研究
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333.豊⽥市の新規居住場所の違いが世帯や⾏政の収⽀に及ぼす影響の検証 本章では、居住誘導を進める上での鍵となると考えられる、転居希望世帯や⾏政などの宅地開発に関係する主体に焦点を当て、新規居住場所の違いが世帯や⾏政の経済的な収⽀に及ぼす影響を検証する。 3-1.居住誘導が求められる背景や居住地選びの現状 (1)⾃治体財政への影響 福⽥ら27)は、⼈⼝減少や交付税逓減といった今後想定される諸状況が財政に与える影響要因を整理し、それを定量的に評価するモデルを構築したシナリオ分析を⾏っている。その結果、都市域の拡⼤は⾃治体財政に多⼤な影響を与え、その影響は地⽅交付税低減や⾼齢化進展による影響の⼤きさに匹敵することを指摘している。 国⼟交通省の報告書28)では次の事例が報告されている。⻘森市では過去30年間に中⼼部から郊外への⼈⼝流出のために約350億円の⾏政コストを投資してきたと試算しており、仮に市街地の拡⼤がなければ、不必要な経費であったとしている。また、富⼭市では、市街地の拡散を放置すると今後20年間で総⼈⼝が約22千⼈減少する⼀⽅で郊外部の⼈⼝は約19千⼈増加し、511haの新規開発により177億円の追加投資が発⽣したとの試算結果が報告されている。 (2)⽣活環境への影響 加知ら29)は、余命指標を⽤いたQOL指標を開発し、市街地拡⼤抑制策の都市全体に対する効果を評価し、評価対象都市の⽬指すべき都市形態として、インフラ整備や⼈⼝を旧来の集落周辺に再び集中させ、分散集中型に誘導することが有⼒な選択肢であることを指摘している。 平成26年度国⼟交通⽩書30)では、⼈⼝減少による⽣活サービスや社会インフラの⽼朽化、地域公共交通の衰退、空き店舗の増加、住⺠組織の担い⼿不⾜、学校統廃合等による⽣活利便性の低下や地域の魅⼒の低下は、さらなる⼈⼝減少を招く悪循環に陥ることを指摘している。 27) 福⽥・加藤・林: 地⽅中⼩都市における都市域拡⼤が将来の⾃治体財政に与える影響の分析, ⼟⽊学会第58回年次学術講演会講演集, 2003. 28) 国⼟交通省: 中⼼市街地再⽣のためのまちづくりのあり⽅に関する研究アドバイザリー会議報告書, 2005. 29) 加知・加藤・林・森杉 余命指標を⽤いた⽣活環境質(QOL)評価と市街地拡⼤抑制策検討への適⽤, ⼟⽊学会論⽂集D, Vol.62, No.4, 558-573, 2006. 30) 国⼟交通省: 平成26年度国⼟交通⽩書,2014.

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