中国の都市における交通まちづくりの現状と将来に向けての動向に関する調査
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79 • 新たな取組みを推進し、運転者の身分を特定するため、人工知能技術(AI)の一つである顔認識技術を用いることを試みている。実現されれば、車の盗難事故防止のほか、第三者への会員カードの貸与などの違反防止にも非常に役を立つと期待している。 本節では、中国深圳市での調査を報告するものであるが、これらの調査結果を用いて、日本におけるカーシェアリング事業との比較に少し触れたい。 まずは、深圳市で展開しているような500台以上もある大規模なEVシェアリング事業を本格導入している事例が、日本では存在しない。 また、深圳市はEVシェアリング事業を展開するため、民間企業を対象とした方策提案を募集し、社会貢献を重視している民間企業は積極的に参加するという形で進めている。これに対して、日本では民間主導で商業ベースのカーシェアリングサービスを展開されている一方、高齢者モビリティ対策等とした行政主導の動きは社会実験に止まっているのがほとんどである。 日本と比べて、中国でEVシェアリングが進展している理由は、我々の調査を踏まえて、次のように考える。 まず、中国政府がEV始めとする新エネルギー自動車への移行を従来以上に強く促す規制を定めた背景を受け、中国国内の自動車メーカーが格安なEVを開発・販売している。 次に、各地域では、EV購入補助金を支給するに加えて、従来の石油を燃料とする自動車を規制すると対比的にEVに対するナンバープレートの交付を制限していない。 最後に、カーシェアリングサービスが今後ますます拡大していくと期待されており、多数の民間企業が積極的に参入している。 深圳市では、自動車保有の急激な増加に伴う交通問題を解決する方策の一つとして、EVシェアリング事業を積極的に進めている。本調査は、当該都市でEVシェアリング事業を運営している地域最大手「聯程共享」を対象としたヒアリング調査を通じて、EVシェアリングの運営実態などを明らかにした。

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