中国の都市における交通まちづくりの現状と将来に向けての動向に関する調査
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75 (2)深圳市の自動車交通問題 深圳市では、経済が急速に進展すると同時に、車の利用需要が著しく増加して、2016年末現在の車保有台数は約322万台で、自動車運転免許保有者数は約363万人である33。また、車保有台数の増加が、道路整備と比べて著しく速いため、道路延長1キロ当たりの車保有台数は505台で、中国では一位となっている(2015年7月時点)34。このため、幹線道路では、通勤・通学時間帯において、渋滞が頻繁に発生し、道路渋滞による自動車交通の走行速度低下に伴うCO2排出量の増大などの問題が発生しているほか、物流コストの増加などにより、企業立地の進展にも影響を及ぼす恐れが出始めている。 また、道路整備と同様に、駐車場整備も車保有台数の増加に追い付いていない。2017年10月において、駐車場は9,710箇所で、駐車マス数は約192万であり、車保有台数と比較して126万も少ない35。 車保有台数の急増による道路渋滞や駐車場不足などの交通問題を解決するため、車の保有と利用需要の両方を抑制する方策が求められている。 (3)自動車交通対策 自動車保有を抑制するための方策としては、石油を燃料とする車に対するナンバープレートの交付規制が効果的であると考えられている。交付規制について、深圳市は広州市と同様に、自家用車のナンバープレートを競売や抽選方式で割り当てており、北京市と上海市と異なっている(表 4-2参照)。その結果、規制実施前と比較して自家用車を保有することが非常に難しくなった。例えば、月1回に行われる2017年12月のナンバープレートを取得するための競売での落札価格は約164万円と2017年初めから2倍以上に跳ね上がり、中国で最も高くなった36。 また、車の利用需要を抑制するための方策としても、北京市と上海市と異なり、この両都市で取り入れたナンバープレートの番号による利用規制策(奇数の日に奇数の車のみ可とするや毎日決まった下一桁の番号で走行規制をする等)を導入していない(表 4-2参照)。今後も、経済成長も急速に進むと見込まれている深圳市での車利用需要がますます増加していく可能性があるため、ナンバープレートの交付規制と併せて、車利用段階の需要増加に対応できるような都市交通政策の実施が期待されている。 また、車利用によるCO2排出量を削減するため、上述のように、深圳市では、ガソリン車に対する新規のナンバープレートの発行を制限している一方、自動車産業の発展と豊かになった市民の自動車保有のニーズに応じて、EVについてはナンバープレート交付を制限していない。むしろ、EV普及を加速するため、購入補助金の支給に加えて、充電ステーシ 33 出典:网上深圳交警、http://www.stc.gov.cn/ZWGK/TJSJ/TJXX/201703/t20170320_61339.html(中国語) 34 出典:本地宝、http://jt.sz.bendibao.com/news/2015729/715568.htm(中国語) 35 出典:本地宝、http://sz.bendibao.com/news/20171013/797604.htm(中国語) 36 出典:日本経済新聞、https://www.nikkei.com/article/DGKKZO25102410W7A221C1FFE000/

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