中国の都市における交通まちづくりの現状と将来に向けての動向に関する調査
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58 4. 交通系のシェアリングビジネスの現状及びその課題 2018年3月現在、日本国内でも、メルカリが福岡市で、NTTドコモは東京や神奈川等8都県で自転車シェアリングサービスを提供しているほか、LINEが中国大手のモバイクと提携して、自転車シェアリングサービスを開始すると予定している。 このモバイクこそは、本調査を行う切掛けの一つである。2016年にモバイクが上海で自転車シェアリングサービスを提供し始めて、一気に中国全国で自転車シェアリングのブームを引き起こした。われわれの調査もこの自転車シェアリングから始まった。 4-1 自転車シェアリング 4-1-1 南京市の現状 「自転車シェアリング」という表現は、日本国内では「レンタサイクル」と区別する「共同利用自転車」や「コミュニティサイクル」と同義語であったが、最近は官主導の「共同利用自転車」や「コミュニティサイクル」とも区別するようになった。 我々が本調査を開始する際、共通観念であったため、ここでは、まず、共同利用自転車を簡単に触れる。世界的にみると、杭州市内にある共同利用自転車の台数は8.4万台で、世界一の都市である。ちなみに、有名なパリ市内には2.1万台で世界5位、ロンドンには1.65万台で同12位である28。一般的に、利用するに当たり、保証金を数百元(1元約16円)払って、その後の利用は30分で1元は相場である。お支払は、電子マネーで、Wechat(微信=中国版LINE)で鍵の解除・掛けで自動的に行われる。 中国では、自転車シェアリングと公共自転車は別ものである。前者は「共享」と表現し、後者は「公共」と呼ぶ。「公共自転車」は日本で「コミュニティサイクル」や「共同利用自転車」に近い概念で市政府等「官」主導のサービスである。「共享自転車」はいわゆる自転車シェアリングで、民間サービスである。「共享」は南京ではわずか1年足らずの歴史だが、既に複数社が参入して、短距離交通や端末交通を支えている。デポジットは0~299元(1元約16円)で、利用料金は30分1元が相場である。 写真 4-1 街角で随所見られる駐輪場に止まっているシェアリング自転車(安藤撮影) 28 出典:中国の環球時報、2017年3月24日

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