中国の都市における交通まちづくりの現状と将来に向けての動向に関する調査
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27 2. ITSによる違反の取締り及び事故対策 2-1 はじめに 日本では、平成29年中の交通事故死者数は3,694名で、昭和23年以降の統計上で最も少なく、発生件数及び負傷者数も、平成16年以降13年連続して減少した。一方で、いまだ多くの尊い命が交通事故により失われており、平成29年は、神奈川県内の東名高速道路において、「あおり運転」による交通死亡事故が発生した背景を受けて、「あおり運転」などの悪質・危険な運転行為への対策が求められている。また、飲酒運転による死亡事故が依然をして発生しているほか、登下校中の児童が被害に遭う交通事故が発生するなど、交通情勢は予断を許さない状況にある17。 このような厳しい交通情勢の中、交通事故を抑制するため、全国の各警察署では、交通事故抑止に資する取締りを推進しているところである。その中で、交通事故実施の分析、地域住民の要望を踏まえた指導取締り方針の策定、限られた警察力の中で最大限の効果を発揮できるような具体的な指導取締り計画に基づく指導取締りの実施、その指導取締りの効果検証などがPDCAサイクル(PDCA cycle、plan-do-check-act cycle)によって進められている。 今後も、交通事故に直結する悪質性・危険性の高い違反に重点を置いた指導取締りを推進するなど、道路交通秩序の確立に向けて一層の努力と工夫を重ねていくことが必要である。平成30年中における運営重点内容は以下の通りである17。 • 交通事故分析に基づく交通指導取締り • 自転車に対する指導取締りの強化 • 飲酒運転等の根絶に向けた取締りの一層の強化 • 無免許運転の罰則強化等を踏まえた取締りの強化 • 携帯電話使用等違反の取締り強化 • 総合的な駐車対策の推進 • 適正かつ緻密な交通事故事件捜査及び組織的な被害支援の推進 • 総合的な暴走族等対策の推進 • 受傷事故防止の徹底 • 不適正事案の根絶 これらの運営重点内容を推進するにあたり、より効果的な交通指導取締りを実施することが求められている。その中で、道路システム高度化(Intelligent Transport Systems、ITS)によるものが最も期待されている効果的な交通取締りと言える。日本では、ITSによる交通 17 出典:森末治、交通事故抑制に資する交通指導取締りなどの推進、月刊交通、第49巻第1号、32-42

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