中国の都市における交通まちづくりの現状と将来に向けての動向に関する調査
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113 6. 調査結果を踏まえた政策提言 本調査研究では、中国の都市における交通まちづくりの現状と将来に向けての動向を把握するため、南京市、西安市、深圳市を主な対象都市として、インターネットを通じた文献調査及び、関係者を対象としたヒアリング調査を実施した。調査内容は、ライドシェア、自転車シェアリング、路面電車事業の復興、都市づくりや地域づくりにおける特区制度「国家級新区」の活用、世界的に展開されているスマートシティの実現に向けてのビッグデータの活用やITSなどの事例である。ここで、中国の先進的な事例から日本にも参考となる内容を政策提案として行う。なお、報告書の内容構成に応じて、次のように整理する。 ○ITSによる交通取締り及び事故対策の検討 日本では、交通事故の削減に向けて、人工知能などを活用した取組みは、中国と比較してやや遅れることや、一般市民が運転しているドライブレコーダーによる違反検挙は日本国内の報告にはみられていないことや、交通警察の業務を支援するためのシステム開発は遅れることなどの問題点が挙げられる。今後、本研究では明らかにした中国の先進事例を参考しつつ、日本の実情に合われるような方策を定めることが望ましい。これらの方策を通じて、日本ではより一層の交通安全の実現に寄与すると考えられる。 ○交通系ビッグデータの活用方法の検討 日本では、交通系ビックデータの活用方法を検討しているが、今後、ビッグデータを活用したデータプラットフォームを構築するため、中国深圳市の先進的な事例を参考することが望ましい。例えば、どのような組織はどういうデータを収集・整理することを通じて、どういう対象に対して、どのように活用できるかを検討するにあたり、深圳市の事例を参考することが有用である。ただし、中国では、個人データを取り扱う規制が厳しくないことに対して、日本ではその規制が厳しいため、交通系ビッグデータを収集する際に留意する必要がある。 ○交通系のシェアリングビジネスの推進 日本では、交通系のシェアリングビジネスをさらに推進しているが、最近の新聞記事によると、中国のシェアリング自転車はもう既に日本に導入し、観光都市の奈良市ではモバイクの車両が使われるようになった。一方で、ライドシェアは日本で「白タクシー」と見られているため、法律上では禁止されているが、最近ではタクシーの乗り合いの実証実験も始まり、このような実証実験を通じて蓄積した経験を踏まえて、乗り合いタクシーの導入が期待される。また、日本における電気自動車によるカーシェアリングを推進するため、中国の事例からみると、格安な電気自動車の開発・導入及び、民間企業の積極的な参加が必要だろう。

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