車両挙動を考慮した生活道路における高齢運転者への助言型ISA効果検証
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3 一方で、生活道路における助言型ISAの速度抑制効果について、先行研究ではまだ検討できていない重要な視点について、次の通り整理できる。 ○速度標識無の生活道路における助言型ISAの速度抑制効果検証 分析必要性としては、日本では速度標識無の生活道路が無数に存在し、これらの道路区間における速度抑制が重要な課題である。このような道路において、特に交通事故の多い高齢運転者を対象とした助言型ISAの効果に関する研究蓄積が少ない。 ○速度規制変化点で助言型ISAによる速度遵守効果検証 分析必要性としては、高齢運転者は身体能力の低下により速度規制標識を見落としやすいことが知られている。特に、速度規制が低下する地点では、速度規制標識の見落としが生じると、意図せず速度を超過してしまう可能性があるため、これらの場所でいかに速度を遵守できるようにするかが重要な課題である。これらの場所において、助言型ISAによる速度抑制効果が検証できれば、助言型ISAは速度抑制の有効な方法となりうる。 また、先行研究では、車両挙動を考慮できていないため、公道実験での速度低下の影響を十分に取除けていない問題点が残された。一方で、公道実験では、走行速度は道路渋滞、一時停止、交差点右左折等による速度低下の影響を受けると考えられ、速度遵守行動をより適切に捉えるために、速度低下の影響を排除することが必要である。 そこで、本研究では、上記の問題意識を受けて、先行研究の成果と課題を踏まえ、助言型ISAの長期的な公道実験で収集したプローブデータを用いて、更なる詳細分析を通じて、助言型ISAが生活道路における運転者の速度遵守行動に及ぼす影響を把握することで、日本における助言型ISA機器の実導入推進にあたっての基礎的知見を得ることを目的とする。 1-2 研究概要 ○プローブデータの再構築(報告書第2章) 先行研究では、広範囲でデータを取得していたものの、ISA稼動範囲である豊田市の中心部のみを対象地域としていた。ここでは、分析の範囲をさらに広げるために、取得した全てのトリップデータを活用するべくデータを整理する。また、研究分析を実施するため、速度規制の紙データの電子化、車道幅員5.5 m未満の生活道路空間の抽出、マップマッチングアルゴリズムの適用対象範囲の拡張などの準備作業をする。 ○速度標識無の生活道路における助言型ISAの速度抑制効果検証(報告書第3章) 研究分析実施にあたって、速度低下の影響を除外するため、交差点部等のGPSポイントを解析対象から除外することにより、単路区間の実態をより適切に表現する代表速度データベースを構築する。そして、速度標識有の生活道路と速度標識無の生活道路それぞれにお

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