自動運転普及がもたらす都市交通への影響研究
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632)⾃動運転⾞による交通事故の法的責任に関する議論 ここでは中川の論説34)を基に、交通事故の法的責任について概要を整理する。 ⾃動運転の導⼊に伴い、交通事故の法的責任については、刑事上の責任と⺠事上の責任とでは法的責任のあり⽅で議論の枠組みは異なる。 刑事上の責任は、過失責任を基本原則としている。⼀⽅⺠事上の責任は、過失責任を基礎としつつ、過失を前提としない法的責任も含めて議論を進める必要がある。 表Ⅱ-3-7 刑事上の責任と⺠事上の責任の違い34) 刑事上の責任 ⺠事上の責任 社会秩序維持のために、犯罪者に制裁として刑罰を科す 被害者の救済のために、発⽣した損害を経済的に補填する 加害者に対する制裁 被害者の被害をどう補填するか 加害者の故意および過失という主観的要件と切り離しづらい 加害者の故意および過失という主観的要件よりも被害者の権利の侵害という客観的要件に重きを置くことが許される ⽴証責任は訴追側の検察官にある ⾃賠責法や製造物責任法、国家賠償法によって、交通事故の⺠事責任について過失責任の原則に修正を加えている すなわち、⾃賠責法は被害者が過失を⽴証しなくても(中略)加害者に対して無過失責任に近い責任を負わせている 製造物責任法は、⽋陥があれば、過失がなくとも、不法⾏為責任を認める(後略) 国家賠償法は、道路等の設置⼜は管理に瑕疵があったために被害者に損害が⽣じた場合、過失がなくても不法⾏為責任を認め、国及び公共団体に無過失責任を負わせている また、中川は、⾃動運転に関する運転者やメーカーの刑事責任についても検討を⾏っている38)。その結果、Lv4等の⾃動運転中において交通事故が発⽣した場合、乗員に対して運転⾏為に伴う義務を科すことが難しく処罰を受けないことが想定されるとしている。 メーカーの責任については、①⽴証のハードルが⾼い(処罰対象の個⼈について過失が認められる必要があり、その個⼈に結果予⾒可能性を前提とした結果予⾒義務、結果回避可能性を前提とした結果回避義務があったと⾔えることが必要。⽴証責任は訴追側の検察官にある)、②結果予⾒可能性を肯定することの難しさ、③結果回避義務、結果回避可能性及び因果関係を肯定することの難しさ、の3点から処罰される事案は限定的になるとしている。 こうした検討を踏まえ、中川は「この問題の解決のためには、道路運送⾞両法が規定している保安基準の遵守のための⼀連の制度及びこれに係る罰則規定を⼗分活⽤するとともに、より⼀層充実させ、その違反について適切に処罰していくべき」としている。 38) 中川由賀: ⾃動運転に関するドライバー及びメーカーの刑事責任〜⾃動運転の導⼊に伴って⽣じる問題点と今後のあるべき⽅向性〜, 中京Lawyer, Vol.27, 2017.
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