自動運転普及がもたらす都市交通への影響研究
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482-4.⾃動運転の光と影 ⾃動運転は、現在の社会や都市交通が抱える様々な課題を解決する可能性を持つ⼀⽅、副作⽤のように負の効果をもたらす可能性も指摘されている20)。すなわち、⾃動運転には光と影の部分が存在する。既往研究の成果を踏まえて光と影を整理した結果を表 Ⅱ-2-3に⽰す。 表に整理しているように、⾃動運転の光と影の多くが表裏⼀体の関係にある。すなわち、⾃動⾞が移動の利便性を⾶躍的に向上させただけでなく外部不経済を⽣み出したように、⾃動運転もまたそのようになる可能性がある。⾃動運転の外部不経済(影)をできるだけ⼩さくするためには、普及の前から様々なルールを整えておくべきである。 しかしながら、⾃動運転の利便性(光)は⾃動⾞と同様に⼤きく、その光をできるだけ早く利⽤者が享受できるようにすることも重要である。光の部分を最⼤化し、影の部分を最⼩化するためには、⾃動運転を野放図に普及させてはいけない。ルールの整備を急ぐか、普及に合わせてルールを整える必要がある。 表 Ⅱ-2-3 ⾃動運転の光と影の整理20) 分野光/影/課題具体的内容実装に向けた課題課題•倫理上の課題•ジュネーブ条約•事故発生時の責任問題•社会受容性の醸成交通安全光•交通事故抑止、削減•事故率減⇒安全基準緩和⇒車両軽量化⇒燃費向上影•自動車利用増加による交通事故増加•機械誤作動や不適切操作による交通事故の懸念•一般車と自動運転車の混在による交通事故の懸念交通円滑化光•周辺車両との協調運転等による渋滞緩和•運転中のセカンドタスクによる渋滞問題の縮小影•自動車利用増加による渋滞悪化の懸念•自動運転の悪用(駐車料金を逃れるための路上回遊など)による渋滞悪化移動手段確保光•自動運転による免許非保有者の移動手段の確保•自動運転車と既存公共交通機関の適切な役割分担による既存公共交通の利用増加•自動運転車による運転手不足の解消影•自動運転の過度な普及による既存公共交通の収益悪化•自動運転利用サービスの有無や利用料金高止まりによるモビリティ格差拡大•自動運転車の過度な普及による職業運転車の雇用縮小環境光•環境的に最適な運転制御による環境負荷削減影•自動運転車の過度な普及による環境負荷の増加都市(土地利用)光•バレーパーキングと駐車場再配置による土地利用の高度化•都市内の物流車両等の拠点分散化による土地利用の高度化•モビリティ向上によるまちへの来訪増加やそれによる街の活性化影•過度な自動車利用の普及による都市の低密度化•協調型(インフラ強調等)システムや自動運転に求められる道路維持管理コストの増大、高精度地図作成コスト負担増大等によるインフラ整備コストの増大 20) 公益財団法⼈豊⽥都市交通研究所: 研究調査報告2016-① ⾃動運転普及がもたらす都市交通への影響研究 報告書,2017.

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