自動運転普及がもたらす都市交通への影響研究
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1077.⾃動運転を利⽤した移動サービスの料⾦等に対する意識調査 7-1.調査の⽬的 (1)調査の背景 ⾃動運転が実現した社会においては、移動サービスの多くがビジネスベースで提供されることが想定される。その場合、サービス提供者側の⽴場で考えれば、多くの需要が⾒込める地域でサービスを供給すれば⼤きな利益が期待できる。⼀⽅、需要が少なく利益が⾒込めない地域においては供給が⼗分になされない恐れもある。さらに、需要が⼤きな都市部においては、供給が過多になることで交通渋滞や交通事故発⽣の懸念もある。需要と供給の過密や過疎を是正し、バランスをとることが重要である。 需要と供給を調整する施策には様々なものが考えられる。その内容を表Ⅱ-7-1に⽰す。これらの施策は相互に連携することでより⼤きな効果が得られる。つまり、混雑課⾦で得た資⾦を、迂回割引や補助⾦の原資とすることで、全体の最適化を図ることが期待できる。 混雑課⾦や迂回割引は、これまでにも提案されているが国内では実現した実績はほとんどない。⼤規模に実現した事例として、⾸都⾼速道路や阪神⾼速道路で実施される環境ロードプライシングがある。これは2001年のETC導⼊に合わせて開始された施策である。新たな技術の導⼊により、それまで実現しなかった施策が実現することもある。 ⾃動運転は⾔うまでもなくこれまで実現しなかった技術である。加えて、サービスとしてもこれまでにないものである。料⾦制度の設計は⽐較的⾃由にできると考えられる。 表Ⅱ-7-1 需要と供給の過密や過疎を是正する⽅策 分類 項⽬ 内容 需要側の⽅策 混雑課⾦ ⽅式 需要が集中し混雑した路線や地区を⾛⾏する⾞両に対して課⾦するもの。導⼊事例としてはシンガポールやロンドンなどが有名。国内でも、名古屋⼤学が実施した駐⾞デポジットシステムの社会実験がある。 迂回割引 何らかのインセンティブを提供することで混雑などの問題が⽣じる区間の迂回を促すもの。導⼊事例としては、⾸都⾼や阪神⾼速で⾏われている環境ロードプライシングがある。 供給側の⽅策 補助⾦ ⽅式 採算の確保が困難な地域における公共交通の確保や維持のために、⾃治体等が公共交通の⾚字分などを補填するために補助⾦を出すもの。厳しい財政状況等により厳しい⽬が向けられることもある。 内部補助 交通事業を営む事業者が、⾃社内で採算路線の利益で不採算路線の⾚字を補填するもの。⾃助努⼒に委ねられるため、環境の変化等により維持できなくなる場合もある。

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