自動運転普及がもたらす都市交通への影響研究
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97(6)クルマ離れの状況 1)⽇本の状況 若者のクルマ離れが進んでいることが指摘されて久しい。2012年には公益財団法⼈国際交通安全学会のIATSS Reviewにおいて「若者と交通」の特集が組まれ、若者のクルマ離れに関する議論が展開された。しかし、⼀般社団法⼈⽇本⾃動⾞販売協会連合会が発表する新⾞販売台数(登録者+軽⾃動⾞)の推移94)をみると、最近の5年間では多少の増減は認められるが、販売台数の減少トレンドは認められない。 ⽇本銀⾏名古屋⽀店は、東海地域における「街と⾞の関係」の変化について調査を⾏い、次のような結果を公表した95)。「「⾞利⽤を前提とした暮らし」には、変化の兆しもみられます。特に⽬⽴つのは、名古屋市中⼼部や3県中核都市のターミナル駅近隣におけるマンション開発の増加です。都市部のマンション(中略)⼊居者は鉄道等の利便性の⾼さから、⾃家⽤⾞を⼿放すケースが少なくない」「また、最近では免許を持たない若年層も増えてきており、こうした層は、将来の住宅取得に際して、⾃家⽤⾞の保有が必要となる郊外の⼾建よりも、都市部のマンションを好む傾向を強めていく可能性があります。」 このように、三⼤都市圏の中でも突出して⾃動⾞分担率が⾼い中京都市圏にある東海地域においても、⾃動⾞保有に対する意識は変化してきている。全国の販売台数の変化には表れないが、地域や年代によっては、意識の変化が⽣じていることがわかる。 2)配⾞サービスと⾃動⾞保有 また、先に整理したシェアリングエコノミーと⾃動⾞保有の関係について、⽶国テキサス州における研究成果96)が発表されている。紹介記事97)をもとにすると、テキサス州オースティンでは2014年以来、UberやLyftなどの配⾞サービスが提供されてきたが、2016年5⽉に規制が強化されたためにサービスを停⽌した。その後この規制が無効化され、2017年5⽉にサービスが再開された。その間1年間の⼈々の⾏動変化を分析した結果、41%がマイカーの利⽤を再開し、そのうち9%は新しく⾞を購⼊していた。42%は別の配⾞サービスに乗り換えていた。公共交通機関の利⽤に転換したのは3%のみであった。 サービス開始から⼀時中断まで2年間、中段から再開まで1年間という時間の経過で起きた変化であるが、配⾞サービスあるいはライドシェアが⾃動⾞保有に影響を及ぼしていることが実証的に⽰された事例と⾔える。 94) ⼀般社団法⼈⽇本⾃動⾞販売協会連合会: 新⾞・年別販売台数 総合計(登録者+軽⾃動⾞), http://www.jada.or.jp/contents/data/type/type00.html, 2017. 95) ⽇本銀⾏名古屋⽀店: 東海地域における「街と⾞の関係」の変化について, 2017. 96) Hampshire, Robert and Simek, Chris and Fabusuyi, Tayo and Di, Xuan and Chen, Xi: Measuring the Impact of an Unanticipated Disruption of Uber/Lyft in Austin, TX (May 31, 2017). Available at SSRN: https://ssrn.com/abstract=2977969 or http://dx.doi.org/10.2139/ssrn.2977969. 97) Business Insider Japan: ⾞は買わない?配⾞サービスが変えた都市の交通-テキサス州で調査, https://www.businessinsider.jp/post-104367, 2017.

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