高齢運転者の増加を考慮した安全・安心なモビリティ実現を目指した研究
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59 5-4.ADASの作動条件に関する認識構造の把握 上述の結果を受けて、ADASの作動条件に関して、ADAS搭載車両を保有する運転者がどの程度認識しており、その認識が自身のADAS車両の運転にどのような影響を及ぼしているかについて把握した。 5-4-1.方法 ここでは、ADASの代表的機能である自動ブレーキの作動条件に関する認識構造に着眼する。この認識構造の定量化において、変数間の関係性を包括的に把握できるパス解析を使用する。図5-9に示すように、自動ブレーキの作動条件に関する認識は、個人属性や自動ブレーキに関する情報の接触機会から影響を受け、その認識程度が保有車両を自動ブレーキ搭載車に更新したときの運転行動(心理・身体挙動・操作)の変化に影響を与えると仮定した。個人属性は、年齢、性別はもちろんのこと、運転頻度や保有している車両の種類、自身の活動能力、運転スタイルなどで構成されると仮定した。また、自動ブレーキに関する情報収集は、自動ブレーキの購入前体験有無やディーラーでの説明、メーカーHP等様々な媒体で提供される情報により構成されるとした。自動ブレーキの作動条件の認識程度は、表5-4に示したメーカーHPでの公表内容を参考に網羅的に設定した。自動ブレーキ搭載車への更新後の変化は、自動ブレーキ搭載車への変更後の普段の補償運転の変化によって代替できるものと考えた。 本分析で使用するデータは、自動ブレーキ搭載車を保有するという特徴的な集団を対象として実施するものであるため、費用面も含め、対象者スクリーニングを効率的に実施する必要があった。よって、ここではある程度の母集団を有し、スクリーニング等に関して容易に対応ができるWEB調査会社の楽天リサーチを通じて調査した。調査概要を表5-5に示す。本分析では楽天リサーチに登録するモニタ227万人(2017.4現在)のうち、自動車を保有する122万人を母集団とする。本母集団は、楽天の各サービス(楽天カード、楽天証券、楽天infoseek、楽天市場、楽天GORAなど)を利用している方で構成されている。表5-6に本母集団の年齢・性別構成を示す。WEBサービス利用者であるという前提があるためか、若年層、高齢層の構成割合が低い。 本分析では、122万人の上記母集団に対して回答目標数も念頭に表5-7に示す性別・年齢階層別に無作為抽出した9,999名のモニタにスクリーニング用の調査票(ウェブサイト)を送信し、自身の車両の保有状況、自動ブレーキ搭載車の保有状況を確認した。その後、スクリーニング(自身の車両を保有し、その車両が自動ブレーキ搭載車である)を通過した対象について、本編調査票を送付し、概ね性別・年齢階層別の目標数の回答を得た段階で調査を完了させた。回答目標数は、調査費用面の制約を踏まえつつ、高齢/非高齢といった年齢階層別で設定するとともに、回答傾向に差が生じることが予想される性別でも設定した。具体的には、高齢/非高齢及び性別により分けた4群それぞれに対して200名とした。

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