高齢運転者の増加を考慮した安全・安心なモビリティ実現を目指した研究
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1 1.はじめに 1-1.背景 最近、社会的に最も注目されている高齢者が運転する車による交通事故対策について、「運転機会の削減」の視点からの検討が進展している。本視点において有効と考えられるのが運転免許を返納してもらい、バスやその他代替できる交通手段に転換してもらうというものである。例えば、2017年3月に改正された認知機能検査や高齢者講習制度がある。これらは高齢運転者の違反や認知機能等に応じて免許の停止・更新を許可しなかったり、自身では客観的に捉えることができない運転能力の低下に対する気づきを与えようとするものであり、その効果が期待されるところである。しかし、果たしてこれで十分に問題が解決するのであろうか。 図1-1に示す「平成27年全国都市交通特性調査」による高齢者の免許有無別・居住都市別にみた外出率をみると、運転免許を保有する群は保有しない群に比べ外出率が高く、特に三大都市圏以外でその傾向が顕著であることが示されている。つまり、高齢者の自動車運転の可否が外出によって達成される一連の生活の質(QOL)に大きく関連をしていることを意味する。 このことは、別の調査からも確認されている。図1-2に示す著者らが愛知県豊田市の代表的な中山間地域に居住する高齢者を対象に調査した結果によれば、運転日数が多い高齢者ほど、多様な生活の質に関わる指標において良い結果が導き出されている。 図 1-1 高齢者の免許有無別・居住都市別にみた外出率1)

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