高齢運転者の増加を考慮した安全・安心なモビリティ実現を目指した研究
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22 3.既存のADASの効果検証 3-1.はじめに 地方都市では、自動車が利用できることが高齢者の生活の命綱になっている場合も想定される。このような状況からも、運転を控える/やめるための対策に加え、いかに長く安全に安心して運転を継続してもらえるかといった支援のあり方も、現実として非常に重要な視点である。この視点からの取り組みとして、衝突被害軽減ブレーキなどの安全運転支援技術(ADAS:Advanced Driver AssistanceSystem)が搭載された自動車の高齢運転者への普及がある。例えば、平成29年度から国土交通省、経済産業省などが中心となり、官民連携による安全運転サポート車(サポカー/サポカーS)の普及促進に向けた取り組みを開始している1)。衝突被害軽減ブレーキ等、ADASは搭載車の事故抑止効果が期待されるところだが、果たして高齢運転者に対してはどの程度の効果があるのだろうか。 ここでは、交通事故総合分析センター(ITARDA)で提供される事故車両データ情報を活用し、ADASの装着の有無による交通事故の発生傾向を分析し、その効果を把握する。 本章では、以下の内容で分析を進める。 特定車種等のADASの装着の有無による交通事故の傾向 自動車事故対策機構(NASVA)が実施するADAS評価である予防安全性能アセスメントに情報が記載される評価対象車両の車種・グレードの「型式」及び「類別区分番号」を特定し、当該車両データ情報をキーとしてITARDAにデータ提供を依頼することでADAS搭載/非搭載による分析を実施する。これによりADAS搭載による交通事故傾向の変化を把握する。 ADAS装着を契機とするスバル車の事故率の変化傾向 早期よりADASを搭載したスバル車に着眼し、本格普及の開始前の2008年から販売台数当たりの事故件数による事故率の変化について分析する。これによりADAS搭載率が高まっていく過程での事故率の変遷を俯瞰的に把握する。 3-2.特定車種等のADASの装着の有無による交通事故の傾向 3-2-1.方法 ここでは、2012~2016年に発生した交通事故データを用いる。上述のように、自動車事故対策機構(NASVA)が実施するADAS評価である予防安全性能アセスメントに情報が記載される評価対象車両の車種・グレードの「型式」及び「類別区分番号」を特定し、当該

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