高齢運転者の増加を考慮した安全・安心なモビリティ実現を目指した研究
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18 2-4-2.結果 未記入や回答拒否を除いた本分析で対象となった有効被験者は233名(平均年齢74.2歳、標準偏差4.1歳、最低年齢69歳、最高年齢89歳)である。以下では、老化及び過剰な自信と運転行動、運転適性、心身状態等の関係性それぞれについて整理する。 (1)老化と運転特性 モデルの構築にあたっては、多重共線性の回避のため、説明変数間の相関係数が0.7を超えた「合図の有無」と「合図の時期」について、後者の「合図の時期」を除外した。また、モデルの信頼性を高めるため、ステップワイズによる変数選択を行った。 結果を表2-8に示す。モデルの精度を表す修正済み決定係数は0.269とモデルとしての精度は高くない。本モデルの対象が比較的類似する69~89歳の特定年齢層の群であるということもあり、目的変数の変化幅が小さかったことも影響している可能性はある。ただし、ここではあくまで老化がどのような運転特性により影響をうけるかという観点から分析を進めるため、有意となった指標を中心にみることでこの結果から考察できるものと考える。 指標をみると、まず視力や心身機能に関わる項目で有意となっていることがわかる。特に視力が高度に有意となっている点は上述の整理と合致するものである。心身機能においては物忘れ自覚、糖尿病、入院経験が有意となっている。このような条件は病理的側面から老化を説明しているものと考えられる。 次に運転に関わる指標をみると、運転行動における二段階停止、安全確認が高度に有意となっており、運転頻度も有意となっている。老化に従い運転頻度が減少するのは先の整理と合致する傾向であり、本モデルでもその現象を表現できていることがわかる。また、有意とはなっていない停止位置を含め、二段階停止、安全確認はいずれも一時停止のある交差点における運転行動であり、老化がこのような条件下の運転行動の適性な遂行に支障をきたしていく可能性があることがわかる。他方で、運転適性にかかる指標で有意となったものはなかった。

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