高齢運転者の増加を考慮した安全・安心なモビリティ実現を目指した研究
19/85

15 これらの疑問に対して、ここでは高齢運転者に対して実施された高齢者講習により得られた運転特性のデータを活用し、分析、考察を行うこととする。 2-4-1.方法 ここでは、平成28年の7~9月に愛知県にあるトヨタ中央自動車学校にて高齢者講習を受講した448名に対し調査を依頼した結果2)を活用する。本講習では、主に3種類の調査・講習を実施している。ひとつは教習所コースで実車両(教習車)を使用し運転指導員が信号交差点の通行、進路変更における運転操作などを評価する運転行動である。ふたつめはドライビングシミュレータを使用し、飛び出しをする歩行者などの反応を評価する運転適性である。さいごに、運転において最も重要な感覚である視力である。これらの調査・講習結果に加えて、心身状態を含む個人属性を意識調査形式で別途把握した。 データの活用にあたっては、実施機関である自動車学校はもちろんのこと、講習内容への影響を考慮し、愛知県警察本部に実施可否の確認を行うとともに、講習参加者すべてにデータの活用に関する説明及び同意書をもらうなど、倫理面での対応を行っている。 表2-6は調査項目の一覧である。トヨタ中央自動車学校では、運転適性において図2-2に示す三菱プレシジョン社のDS-20が使用され、選択反応検査、注意配分/複数作業検査が実施された。選択反応検査、注意配分/複数作業検査は、表2-7に示すように選択反応は主に誤反応の計測に主眼を置き、注意配分/複数作業検査は主に見落としの計測に主眼を置いている。計測後、出力される結果はいずれも値が小さい方が運転適性が高いと判定される。 本研究では、老化と運転行動、運転適性、心身状態等の関係性について、年齢を目的変数、運転行動、運転適性、心身状態等を説明変数とする重回帰モデルの構築により考察することとする。また、高齢運転者の過剰な自信と運転行動、運転適性、心身状態等の関係性については、「運転への不安」を過剰な自信の代替指標として用いる。すなわち、老化により能力低下がみられる特性がある場合、一般に自身の運転に対して不安を生じさせるはずである。他方で、能力低下があるにもかかわらず、その状態に対して運転への不安を感じない場合、そこには「過剰な自信」が生じているとみなすことができると考える。このことから、「運転への不安」と運転行動、運転適性、心身状態の関係性をみることで、擬似的に過剰な自信との関係性を捉える。ここでは、この関係性について、より明快な傾向を把握するため4段階で把握している「運転への不安」の程度を目的変数、運転行動、運転適性、心身状態を説明変数とする順序ロジットモデルを構築することで考察する。解析にはRのversion.3.4.0におけるMASSパッケージを使用した。

元のページ  ../index.html#19

このブックを見る