高齢運転者の増加を考慮した安全・安心なモビリティ実現を目指した研究
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14 うな運転を控える「運転制限」の変化が特に大きい。上述の整理からもこの補償運転は、交通事故の発生抑制に大きく寄与していることが伺える。他方、速度抑制や注意集中といったその他の補償運転は、運転を継続しながらより「安全」な運転を担保しようとするものである。ただし、上述の整理のように、そもそもの心身機能の低下が運転能力に大きく影響を与えていくなかで、このような運転制限以外の補償運転がどの程度の効果を挙げることができているかは明瞭でない。運転支援を検討するなかでは、このような効果が担保しづらい補償運転を支えるようなものが求められているのではないだろうか。 また、ハンドル操作不適に比べアクセルやブレーキの踏み違いが老化により顕著となる傾向は、前述の運転能力の整理でも確認できていたものである。アクセル/ブレーキの操作は下肢の運動能力に関連するものであり、なかでも平衡性などの指標が影響する。前述の言及のとおり、平衡性は老化による影響が顕著な指標でもある。高齢運転者の支援において下肢に依存する操作の支援が極めて重要となっていることが言えるだろう。 図 2-1 補償運転の年齢変化1) 2-4.高齢運転者の運転特性の整理 運転は単路や交差点、沿道状況や他車(者)の存在など、多様な条件下における認知、判断、操作のプロセスの繰り返しにより達成される。老化は、認知、判断、操作のプロセスそれぞれに課題を生じさせることは確認してきたが、では、特にどのような条件下で課題を生じさせやすいのであろうか。 一方で、このような能力低下に対して、高齢運転者自身は自覚しない、もしくは自覚しつつも運転に支障を与えるものではないといった判断をしやすいことを確認した。このような自身の運転能力に対する過剰な自信とでもいうべき傾向は、高齢運転者の負の特性のひとつと考えることができるが、このような過剰な自信がどのような運転特性として表出するのであろうか。

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