高齢運転者の増加を考慮した安全・安心なモビリティ実現を目指した研究
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10 バイタリティの低下が大きいことがわかる。他方、ネガティブ・中立的な記憶は忘れやすく、調和性や誠実性は高まることがわかる。また、帰納的推論(個別的・特殊的な事例から一般的・普遍的な規則・法則を見出そうとするもの)や、空間イメージ操作、言語能力、言語記憶などの知能に関する能力、情報処理に関する能力は老化による変化は比較的小さい。 ワーキングメモリに関する能力低下は、交差点での右左折など多様な状況判断が同時並行的に求められる自動車運転時における大きな課題となるものと予想され、老化における大きな課題であるものと推察される。 表 2-3 老化による心(脳)機能の変化 ※中年を基準としたときの比。基準値より上回る場合は赤色、下回る場合は青色で表現し、基準値から離れるほど色を濃く表現している (3)老化による運転能力の変化 運転は、「認知」、「判断」、「操作」の繰り返しにより行われている。交通事故などの危険事象の表出は、これらのいずれかの段階で生じたエラーに起因すると考えられている。表2-4は老化によるこれら運転に必要とされる能力を代表すると考えられる状況の変化を示若年中年前期高齢後期高齢超高齢20歳代30~64歳65~74歳75~89歳90歳以上処理速度1.01.00.90.80.7推論1.11.00.90.80.7知識1.01.00.90.80.7帰納的推論1.01.01.01.00.8空間イメージ操作1.01.01.01.00.9知覚速度1.01.00.90.90.7数的能力1.01.00.90.90.7言語能力1.01.01.01.00.9言語記憶1.01.01.00.90.8ワーキングメモリ1.31.00.60.4-短期記憶1.31.00.90.6-長期記憶1.31.00.60.4-言語知識0.71.01.11.1-ポジティブな記憶0.91.00.8--ネガティブな記憶1.11.00.5--中立的な記憶1.01.00.5--社会的バイタリティ1.61.00.20.2-・40歳代を中年としている社会的優越性0.51.01.0--・前期高齢はグラフの傾向からの推測値・40歳代を中年としている調和性0.21.02.2--誠実性0.11.01.51.7-感情の安定性0.41.01.11.1-経験への開放性1.01.01.00.8-Roberts et. al. (2005) Patternsof mean-level change inpersonality traits across thelife course: A meta-analysis oflongitudinal studies.Psychological Bulletin, 132, 1-25パーソナリティ高齢者を前期高齢としているPark & Gutchess (2002) Aging,cognition, and culture: aneuroscientific perspective.Neuroscience andBiobehavioral Reviews, 26,859-867記憶・40歳代を中年としているMather (2005) Aging andmotivated cognition: Thepositivity effect in attentionand memory. Trends inCognitive Science, 9, 496-502記憶と感情・40歳代を中年としている知能Schaie (2013) DevelopmentalInfluences on AdultIntelligence: The seattleLongitudinal Study. 2nd ed.Oxford University Press・40歳代を中年としている内容立木,笹森ほか(2002)日本人聴力の加齢変化の研究,Audiology Japan,45,241-250・40歳代を中年としている情報処理項目出典備考
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