高齢運転者の増加を考慮した安全・安心なモビリティ実現を目指した研究
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7 2.高齢運転者の特性分析 2-1.はじめに 我が国の高齢化は、社会構造に大きな影響を与えることが予想されている。交通の面においては、特に自動車での移動を前提とした都市構造を作り上げてきた地方都市において、老化による心身機能の低下等から自動車の安全な運転に支障をきたしかねない高齢者の移動支援をどのように考えていくかは重要な課題である。 高度な空間認知や状況判断、操作能力を求める自動車の運転は、心身機能の低下した高齢者にとって相当の負荷を与えていることが予想され、その結果、甚大な交通事故につながるケースもある。 ここでは、老化による一般的な心身機能や運転能力の低下について確認するとともに、高齢運転者の交通事故発生傾向、運転特性を整理することで、高齢運転者に潜在するリスクについて明示する。 本章では、以下の内容で分析を進める。 高齢者の心身機能の低下に関する整理 老化により低下する能力の一般的特性について、既往研究等を通じて整理する。 高齢運転者の交通事故傾向の整理 高齢運転者の多様な条件下での交通事故の傾向について、既往研究の整理等を通じて考察する。 高齢運転者の運転特性の整理 高齢者講習参加者の運転適性結果、視力検査結果及び運転行動診断結果を基に高齢者に潜在する事故リスクについて明示する。 2-2.高齢者の心身機能の低下に関する整理 身体能力、認知機能の低下、さらには心理的側面も含めた老化に関する傾向について、分野横断的に既往研究等の整理を通じて明示するとともに、老化に関する心理的側面(過剰な自信と慎重な態度の同居、等)と身体能力・認知機能面の関係性についても整理を試みる。

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