乳幼児を伴う路線バス利用の際の障壁に関する研究
5/44

3 握し、当事者が意識するほど周囲の利⽤者は乳幼児連れの利⽤者の⾏動に不快感を持っていないことを明らかにしている。 (3)⼦育て環境に関する意識の⼀環として公共交通利⽤や移動について検討した研究 [⼤森宣暁・⾕⼝綾⼦・真鍋陸太郎・寺内義典・⻘野貞康, 2011]は、⼦連れで外出する際のバリアについて、東京都⼼では公共交通機関や外出先の建物に関する項⽬を挙げる⼈の割合型相対的に⾼いこと、東京周辺では安全な徒歩・⾃転⾞の移動環境に関する項⽬を挙げる⼈の割合が相対的に⾼いこと、北関東では⾞で外出する際の項⽬を挙げる⼈の割合が相対的に⾼いこと、をそれぞれ⽰している。その上で、交通システムや活動機会に直接関わる項⽬よりも、天候、⼈混み、⼦どもの⽣活時間に関する項⽬をバリアと考える⼈の⽅が多いことを明らかにしている。 [⾕⼝綾⼦・奥⼭有紀・真鍋陸太郎・⼤森宣暁・寺内義典, 2011]は、少⼦化問題が顕在化している国とそれほど深刻でない国が混在する欧州諸国の出産・⼦育て関連政策に関する既往研究をレビューし、ハード対策としてのバリアフリー政策についてイタリアとフランスの現況をヒアリング調査している。 [⾕⼝綾⼦・奥⼭有紀, 2012]は、外出頻度、⼦連れで⾏っても良いと思う場所・時刻、夫の育児参加への許容意識などの項⽬において世代間の有意な差違が存在することから、⼦連れ移動や⼦育てバリアフリーに対する意識や⾏動には世代間ギャップが存在することを明らかにした上で、公共施設のバリアフリー化が当たり前と捉えられる時代に⼦育てを⾏った若い世代の⽅が、⾏政主導の交通バリアフリーを当然と考える⾏政依存傾向が⾼い傾向にあることを明らかにしている。 [⾕⼝綾⼦・⼤森宣暁, 2015]は、ベビーカー連れの外出の難易度認知について、移動時満⾜度(STS)を⽤いて評価し、⽇本ではベビーカー連れの移動時に周囲からの⽀援を受けた経験が欧州各国よりも少ないこと、ベビーカー連れでの移動の認知的幸福感は、通勤⽬的よりもさらに低いことを明らかにしている。 (4)本研究の特徴 既往研究の多くは公共交通機関の発達した⼤都市圏、また、鉄道の利⽤を中⼼に取り扱ったものが多く、⽇本の多くの地⽅都市のように、都市内の公共交通サービスについて、路線バスを中⼼とするバス交通に依存せざるを得ない地域を対象として取り扱ったものはない。 そのため、本研究では乳幼児連れの公共交通利⽤について、特に、地⽅都市での路線バス利⽤を対象として取り扱う点に特徴があると⾔える。

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る