乳幼児を伴う路線バス利用の際の障壁に関する研究
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1 1.はじめに 交通バリアフリー法の施⾏以来、鉄道や路線バスといった公共交通機関における⾞いすやベビーカーの利⽤環境は、駅においてはエレベーターの設置、鉄道⾞両においては⾞いす等優先スペースの設置、バス⾞両においてはノンステップ化の推進などによって、ハード的に改善がなされてきた。 しかしながら、乗降施設や⾞両に空間的な余裕が存在する鉄道に⽐べ、空間的に制約の⼤きい路線バスにおいて⾞いすやベビーカーを利⽤することには、依然として⼤きなバリアが存在している。特に、⾞いすに⽐べてベビーカーは、その取り扱いに関する規定が曖昧であるという問題が存在している。新型のバス⾞両においては、ベビーカーの利⽤を想定した⾞両設計となっているが、運⾏現場においてベビーカー乗⾞時のベルト固定等の対応が事業者や乗務員・⾞種によってまちまちであることや、⼀般利⽤者への意識啓発、ベビーカー利⽤者への情報提供が不⼗分であるため、ベビーカー利⽤者の路線バス利⽤には⼤きな障壁がある。 また、ベビーカーによるものに限らず、乳幼児を伴う公共交通利⽤には、⼦供が泣き出すなどによって、他の利⽤者の迷惑になるかも知れないという⼼理的な不安感も存在する。 こうしたハード・ソフト両⾯の障壁が存在することから、現状では地⽅都市において公共交通の主⼒を担っている路線バスにおいて乳幼児を伴った利⽤を⾏いやすいとは⾔えない。 このことは、⼦育て世代を路線バスから遠ざけている⼀つの要因となっている考えられる。今後、少⼦⾼齢化の進展に伴って通勤・通学需要が減少することが予想され、⾼齢者の免許保有率の上昇に伴って⾼齢者の⾃由⽬的利⽤がこれまでのように望めなくなる中、⼦育て世代を路線バス利⽤に取り込んでいくことは、公共交通活性化の観点からも必要である。 そこで本研究では、地⽅都市における乳幼児連れの路線バス利⽤の実態を把握し、利⽤しやすい環境を整備するための基礎的な知⾒を得ることを⽬的とする。

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