日報データによるタクシー利用特性に関する研究
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42.既往研究のレビューと本研究の位置づけ ⽇本におけるタクシー研究 ⽇本におけるタクシー研究は交通経済学の分野において規制緩和の影響を分析したものが主である。 [⼭内弘隆, 2004]は⽇本の交通分野における規制緩和について総括的に検討する中で、タクシー分野においても触れている。 [岡⽥順⼀郎, 2003]は、規制緩和直後のタクシー市場の現状について報告している。 [安部誠治, 2008]はタクシー規制緩和について、「市場の失敗」の観点から検討しており、その具体例として、運転⼿の労働環境の悪化と収⼊の減少、タクシーが関係する交通事故の増加などを挙げている。 [宮崎耕輔, 2015]はタクシー事業に関する法制度や規制についてまとめている。 タクシートリップに関する分析についてはあまり多くの研究はなされていない。 [曲渕英邦, 1990]は都市空間の様相を捉えようとする観点から、東京都市圏におけるタクシー利⽤データと道路ネットワークを⽤いた分析を⾏った。その結果、東京のタクシー運⾏の1⽇のパターンとして、1)⽇中ないし⼣刻、東京中⼼部のオフィス街・繁華街内部での短距離⾛ご移動、2)通⽇、東京南東部の鉄道ターミナルからの短距離移動、3)深夜、繁華街から近郊住宅地への中・⻑距離移動、の3種が⾒いだせることを⽰している。 [⼩野⼤・松井寛, 2003]は、名古屋市内のタクシー需要の時間変動特性と地域分布特性について分析を⾏っている。 [吉井稔雄・藤⽥⼤輔・北村隆⼀, 2005]は名古屋都市圏においてGPSを⽤いて記録されたタクシープローブデータを⽤いて、タクシーの時間的・空間的挙動について分析している。また、 [吉井稔雄、藤⽥⼤輔、北村隆⼀, 2005]は、名古屋都市圏においてタクシープローブデータを⽤いた空⾞タクシーの挙動について分析を⾏っている。これらの分析は、流し営業がなされている⼤都市部を対象とした分析であり、地⽅都市のように流し営業が⾏われていない地域を対象とする知⾒は得られていない。 [塚⽥悟之・⾼⽥邦道, 2006]は、地⽅都市において、タクシー会社から提供を受けたGPSデータを分析し、⾞両供給システムを提案しているが、分析対象は1社であり、期間も10⽇間と限定的な分析となっている。 海外におけるタクシー研究 海外においてはタクシーサービスおよびタクシー産業の規制に関する多くの研究が⾏われている。 [Bekken, 2007]は、欧州におけるタクシー規制と欧州⼤陸における近年の傾向についてまとめている。 [Aquilina, 2011]は、イングランドにおけるタクシー市場の数量規制の緩和について10事例を紹介している。 [Schaller, 2007]は、⽶国およびカナダにおけるタクシー市場への参⼊退出規制が新規参⼊に与える影響について整理している。 [Cooper, 2010]は、英国や⽶国をはじめとする多くの国におけるタクシー研究についてまとめている。 タクシー利⽤に関するモデル分析も多く⾏われている。 [Fernandez L.J.E., 2006]は、図式的アプローチを⽤いて呼び出しによるタクシー利⽤の市場の特徴について検討している。 [Yang, 2010]は、道路ネ

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