日報データによるタクシー利用特性に関する研究
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11.はじめに 研究の背景・⽬的 タクシーは鉄道・バスといった他の公共交通機関とは異なり、ドアトゥドアで24時間のサービス提供を⾏うという特徴を有している。現在、⽇本においてはおよそ6,400社のタクシー事業者と、およそ37,000台の個⼈タクシーが営業しており、⾞両数は約230,000両である。年間利⽤者は約150億⼈であり、2015年の市場規模は約1.7億円である。これはピーク時の1991に⽐べて約6割程度に落ち込んでいる [国⼟交通省, 2015]。 近年、タクシー業界を取り巻く環境は厳しさを増している。⻑期的な利⽤者の減少傾向が続いている上、規制緩和以後の⾞両の⼤幅増と、運転⼿の労働環境や安全性の低下といった問題が取りざたされている。こうした状況を改善するため、国はタクシー⾞両数の削減や運賃の値上げによって需要に⾒合ったタクシーの供給量に近づけ、運転⼿の労働環境を改善することと、魅⼒的なタクシーサービスの実現によって利⽤を増加させることを⽬指して、2009年に「特定地域における⼀般乗⽤旅客⾃動⾞運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法(タクシー適活法)」を施⾏、2014年に同法を改正し、各地に特定地域および準特定地域タクシー協議会を設置して、現在ではタクシー業界が中⼼となったタクシーの適正化・活性化の取り組みを求めている [⽡林康⼈, 2014] [加藤博和・杉浦晶⼦, 2015]。 しかしながら、こうした取り組みを⾏う際の課題として、タクシーの利⽤実態に関する詳細なデータがほとんどないことが挙げられる。各地で開催されている特定地域・準特定地域におけるタクシー協議会においても、交通圏単位での利⽤者数や実⾞率、実働率といったデータは提⽰されるが、利⽤の地理的・時間的分布や季節変動・曜⽇変動などが個別の事業者から提⽰されることはない。このため、タクシーが当該地域においてどのような移動を担っているのか、他の公共交通機関と⽐較してどういった利⽤特性を持っているのかということはあまり議論されていない状況にある。 本研究では、愛知県豊橋市を対象地域として、対象地区内のタクシー事業者2社から提供を受けた「デジタルタコグラフ(デジタコ)付きタクシーメーター」によって収集されたデジタル⽇報データを分析することで、地⽅都市におけるタクシー利⽤の特徴について分析し、タクシー利⽤に影響を及ぼす要因について明らかにすることを⽬的とする。 タクシー事業の状況 図 1-1に1990〜2011年の間の輸送⼈員と運送収⼊の推移を⽰す。⽇本においては1990年代以降、⻑引く不況の影響によってタクシーの市場は縮⼩を続けている。 1990年代以降、⽇本においては競争⼒の強化や利⽤者サービスの向上を⽬的として、運輸部⾨の規制緩和が⾏われた。タクシーも例外ではなく、2002年には道路運送法が改正され、タクシー事業への参⼊退出規制が緩和された。しかしながら、タクシーに関しては規制緩和のメリットよりも、増⾞によるドライバーの労働環境の悪化や安全性の低下といった負の側⾯が⼤きくクローズアップされる結果となった。図 1-2に規制緩和前後のタクシー台数の推移を⽰す。規制緩和の実施が公表された2000年以降、タクシーの⾞両台数が⼤きく伸びていることがわかる。多くのタクシー事業者は、規制緩和以後、保有⾞両台数

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