自動運転普及がもたらす都市交通への影響調査
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948.終わりに 8-1.本研究のまとめ 本研究では、自動運転の実現が都市交通にどのような影響を及ぼすのかを検討することを目的として、次の検討を行った。 第2章では、目まぐるしく変化する自動運転を取り巻く状況を、できるだけ最新の情報により整理することで、現在の自動運転の姿を概観した。 第3章では、既往研究の調査を通じて、自動運転に関する研究の潮流を把握した。そして、自動運転の光と影、すなわちメリットやデメリットの整理とそれに基づく自動運転の実現に向けた考察を行った。さらに、日本国内だけでなく世界各地で行われた意識調査の結果を整理し、整理した殆どの結果において自動運転に対して半数程度が賛成あるいは肯定していることを把握した。 第4章では、Webモニター1,480人に対するアンケート調査を行い、ADASや自動運転に対する意識等を把握した。 第5章、第6章では、Webアンケート調査結果を用いて、ADASの効果と普及に向けた方策に関する検討や、自動運転の受容性に影響する要因と普及に向けた方策を検討した。 最後に第7章では、自動運転について議論する上で避けることのできない諸問題について概観した。ここでは、倫理に関する問題と法的な問題を取り扱った。 8-2.今後の課題 本研究に着手した2016年4月から現在の2017年3月までの1年間に、自動運転を取り巻く状況は大きく変化した。AIを運転手と認めるかどうかの判断や、警察庁による自動走行の公道実証実験のためのガイドラインを受けた各地での実証実験の実施、さらには関係省庁での個別課題に関する検討を行う組織が立ち上がるなど、今後さらに動きが加速する気配すらある。 日本国内では、ひとつのマイルストーンとして2020年の東京オリンピック・パラリンピックが位置づけられている。しかしこれは自動運転にとっては単なる通過点であり、2025年、2030年を見据えた検討を進めていくことが重要である。 特に、自動運転が実現した将来の社会の姿を、私達はまだ十分に描けていない。自動運転のメリットを最大化し、デメリットを最小化するためには、何を促進し、何を規制し、何を禁止するのかというルール作りが求められる。また、自動運転が実現すると、都市の姿も大きく変わる可能性がある。都市が変わるには長い時間を要するため、できる限り変化を先取りし、自動運転の普及に都市が備えることが求められる。そうすることで、メリットの最大化とデメリットの極小化が期待できる。 2カ年目となる2017年度の研究では、特に自動運転の普及と都市の関係に焦点をあてて、引き続き研究を進めていく予定である。
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