自動運転普及がもたらす都市交通への影響調査
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917-2-2.自動運転の事故と責任86) 自動運転に際して交通事故が起きた場合の法的責任は、運転者(利用者)と自動運転車両を提供した者(メーカーや行政庁)の間で責任が分配される。また、メーカーに対しては、製品の限界を事前に適切に運転者に伝達していたかも考慮される。なお、ここでの運転者には搭乗しているだけの利用者も含まれるが、簡単のため運転者と記載する。 (1)交通事故発生時の法的責任 交通事故発生時の法的責任には、民事責任、行政責任、刑事責任が存在する。それぞれについて概説する。 • 民事責任:交通事故の被害者が、運転者に対して損害の賠償を求めることで生まれる。運転者は、損害発生の原因が自分の責任ではないことが認められれば、その責任を免れる事ができる。第三者の責任の主なものに、製造物責任がある。 • 行政責任:交通事故や交通法規に違反した運転者に課せられる制裁(罰金等)である。例えば、自動運転車が信号無視をした場合、運転者が自動運転を信頼した結果生じた信号無視であれば、運転者に行政責任を貸すことは許されないと考えられる。また、行政庁の責任も大きな問題となる可能性がある。行政庁が自動運転を許可した場合、自動運転が事故を起こさずに走行できる水準の道路交通環境を整えなかった場合、責任を問われる可能性がある。 • 刑事責任:自動運転を信頼して利用している際に、他者に障害を与えた場合の責任である。ここで問われるのは、運転者に事故発生が予見可能であったかどうかである。また、自動運転車に複数の乗員がいた場合に、誰が危険回避を行う必要があったのかについてや、誰が事故発生の通報や被害者の救護を行う必要があったかについても、今後問題となる可能性がある。 (2)製造物責任 製造物責任法では、製造物とは製造又は加工された「動産」であると定義されている。自動運転を行うためのプログラムは「動産」ではない。そのため、自動運転のシステムは、製造物責任の対象外である。自動運転者の運転者や被害者を救済するためにも、製造物の範囲に自動運転のプロブラムも含めるという法改正がなされるべきだろう。

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