自動運転普及がもたらす都市交通への影響調査
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907-2.法的な問題の概観 法的な問題についても様々な検討がなされている。ここでは、警察庁のガイドライン策定に関わっている有識者の論説等86)を引用して、自動運転の法的な問題について概観する。 7-2-1.自動運転が法的に許容されるかどうかの問題86) 自動車が公道を走行することには、様々な法律等が関係している。それらの法律等は、運転手が自動車を操縦している事が前提とされている。一方、自動運転では運転手が不在の状態も想定されることから、現行法等の解釈等について議論がなされている。以下では、その概要について紹介する。 (1)道路交通法および関連する条約に関する問題 道路交通法第70条には「車両等の運転者は当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ道路、交通および当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。」と規定されている。この規定に従えば、運転手不在の自動運転は許容されない。 この条文は、関係する条約に沿って制定されたものである。それは、ジュネーブ条約(1949年)である。その第8条第5項(第1文)には「運転者は、常に、その自動車のコントロール又はその家畜のガイドが可能でなければならない。他の道路利用者に接近する場合、運転者は、当該道路利用者の安全にとって必要とされる予防措置を執らなければならない。」と規定されている。 これらの条文をどのように解釈するかによって、自動運転の許容性が定まる。 なお、道路交通法は日本の法律であり、国会の場で改正することは可能である。しかし、道路交通法のみを改正することは上位規範であるジュネーブ条約に抵触する事となるため、改正によって自動運転の許容性を担保するには、はじめにジュネーブ条約の改正が必要となる。しかしながら、条約の改正には締結している何十カ国に対して説明を行う必要があり、困難であるとされている。一方で、条文の解釈の追加については比較的容易に行うことができることから、その方法での対応が現実的との見方が存在する。 (2)遠隔監視・操縦による対応 現在は、警察庁の「自動運転の段階的実現に向けた調査検討委員会(2016年6月~)」において、遠隔監視・操縦を行うことで上記条文に適合していると考えることや、その場合の条件等についての議論がなされている。 86) 今井猛嘉:自動化運転をめぐる法的諸問題,IATSS Review,Vol.40,No.2,2015.10.

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