自動運転普及がもたらす都市交通への影響調査
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89そもそも機械にトロッコ問題や応用問題で取り上げられるような複雑な状況を認識することができるのか。認識できるとして、そのような複雑な状況を勘案して瞬時に判断を下すことができるのか。自動運転のセンサーやAIの認識・判断技術に詳しくない筆者には不明である。 いずれにしても、自動運転に限らず自動車を利用する以上は、トロッコ問題に対応せざるを得ない状況が訪れるリスクはゼロにすることはできない。利用者はそれを理解したうえで自動運転を利用してそのリスクは保険で補償するのが、自動運転の倫理の問題に対応するひとつの姿ではないだろうか。 最後に、トロッコ問題以外の倫理問題について紹介する。 規制速度と実勢速度の乖離•規制速度を遵守するAVを追い越す車両による事故誘発の危険•手動運転車の規制速度遵守を徹底すれば良い話し•ただし、規制速度がない区間の扱いは要検討IC出口等の渋滞時における路肩の走行•路肩の通行は例外なく禁止されているが、IC出口やSA・PA入口が混雑している際は、路肩を走行する場合が多い•自動運転車が本線で待機すると事故誘発の危険•路肩通行禁止の例外規定を設ければ良い話しAVと手動運転者のコミュニケーション•AVは「お先にどうぞ」のパッシング等を認識・理解できるのか? これらの問題は、トロッコ問題のように生命に直結する問題ではなく、ルールを整備することで対応可能であると考える。これらの問題に対応したルールを検討する際は、現行ルールありきで考えるのではなく、自動運転への対応だけでなく今後さらに高齢化し多様化するこれからの社会のあり方を見据えて、最善と考えられるルールが提案されることが望まれる。

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