自動運転普及がもたらす都市交通への影響調査
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88この原則は、トロッコ問題の解決にはつながらない。なぜなら、第一条にある「ロボットは人間に危害を加えてはならない」はトロッコ問題においては破らざるを得ないためである。しかし、ありとあらゆる事象に対応しうる原則を見出すことは困難が予想されるため、ロボット3原則のような大きな原則を持っておくことは有効だろう。 (2)AIネットワークシステム研究開発の8原則 人工知能そのものや、人工知能のネットワーク化が普及した社会の到来に向け、その研究開発のあり方を定めた原則のことである85)。この原則は、総務省のAIネットワーク化検討会議(座長:須藤修 東京大学大学院情報学環教授)において検討され、取りまとめられたものである。 原則の内容は、下に示すとおりである。 この8原則は、開発者向けの原則とも解釈できる内容である。しかし、①透明性の原則や、⑧アカウンタビリティの原則は、自動運転車が何らかの事故や問題に見舞われた際の原因究明や利用者保護の観点からも重要な原則であると言える。 7-1-3.倫理の問題についてのまとめ 以上、トロッコ問題に焦点を当てて自動運転に関わる倫理の問題を考えてきた。トロッコ問題には様々な表 7-2に示すような応用問題がある。功利主義における衝突の例のように、何を選択しても正解はないのがトロッコ問題の難しいところである。 表 7-2 トロッコ問題の応用問題 トンネル問題(過誤の問題)人の進入が禁止されているトンネル内に、ルールを破って(過誤)して人が入り込んだ状況ルールを破った人を助けるために、ドライバーが死ぬべきか?バイク問題(被害最小化の問題)2台のバイクのいずれかに衝突が避けられない状況1台はヘルメットを着用、1台は未着用被害を最小化するために、未着用者を避けて、被害軽減が期待されるヘルメット着用者に衝突すべきか?自動車問題(富裕者優遇の問題)2台の自動車のいずれかに衝突が避けられない状況1台は高級車のメルセデス・ベンツ、1台はより廉価なSUV修理代の比較的安価なSUVへの衝突を避けるべきか? 85) 総務省情報通信政策研究所:AIネットワーク化検討会議 報告書2016,概要版,2016.6.

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