自動運転普及がもたらす都市交通への影響調査
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84以上の考察を踏まえて、Rogersの提案するグループと本研究で分類した6グループの対応を整理した表を表 6-9に示す。 表 6-9 クラスター分析結果とRogersの分類との対応の仮説 Rogersの分類説明C1C2C3C4C5C6Innovators構成比:2.5%先進的製品を最初に採用する群リスク許容度が高い○△Early adopters構成比:13.5%採用時期が2番手。比較的周囲への影響度が高い。オピニオンリーダー○△△Early majority構成比:34%一定時間経過後に先進的製品を採用○○△Late majority構成比:34%平均的な人が採用した後に先進的製品を採用○△Laggards構成比:16%最後の採用者。変化を嫌い、伝統を好む△○※○該当する、△ある程度該当する、無印:該当しない (2)自動運転の社会受容性醸成方策についての考察 以上より、自動運転の社会受容性を醸成するためには、第一に安全性を実証することが先決であると考える。自動車がそうであったように、新しい技術には事故がつきものである。しかし、普及前の段階で複数の子どもが犠牲になるなど、深刻な被害をもたらす事故が発生した場合は、社会全体が強烈な拒否反応を示すことが懸念される。そうしたことが怒らないよう、実証実験の段階では、安全の確保に万全を期す必要がある。 実証実験で自動運転の安全性を実証した後、自動運転が便利なものであることを市場に訴える事が重要であると考える。これは、実証実験だけでは訴えることが難しい。なぜなら行政がお膳立てしたものであり、利用者もごく少数に限定されることが多いためである。この役割は、自動運転が市場に投入された後に、C1の心配有・積極利用群やC2の技術認知・積極利用群が担ってくれると期待できる。 自動運転の市場投入後は、その有用性から深刻な事故が起きない限りその普及は確実に進むと考える。しかし、自動運転が社会にとって望ましいことのPRを怠ることは避けるべきである。交通事故の他にも、自動運転は社会に悪影響をおよぼす可能性がないわけではない。その悪影響が、自動運転が社会に与える便益よりも小さいものであれば、自動運転そのものが否定されることはないだろう。 しかし、自動運転が社会に悪影響をおよぼすことが判明した場合は、速やかにその解決に向けた対策を取るべきである。自動運転の普及は、スマートフォンのように加速度的に進む可能性も秘めている。社会が完全に自動運転に順応しないまま自動運転の普及が進むと、後からルールなどを変えることは困難となってしまう。自動運転が社会に導入された直後から、問題点の有無をモニタリングし、迅速に問題点を是正することで、より良い自動運転社会を構築できるようにする必要がある。

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