自動運転普及がもたらす都市交通への影響調査
85/99

82 (2)自動運転の普及に向けて 以上の分析より、自動運転の賛否には自動運転に対する様々な態度が影響し、現在の人々の自動運転の受容性は自動運転の普及に対して賛成または反対という単純な対立構造ではないことが明らかとなった。 すなわち、心配を抱きながらも積極的な利用意向を持つ群が存在する一方、手放しで普及を賛成する群が存在する。あるいは、普及に反対する群は、自動運転がもたらす道路交通における悪影響を特に心配していることが確認できた。 さらに、自動運転に対して全く関心を持たない群、自動車の運転の代替を期待する群、関心はあるが利用意向はあまりない群など、自動運転に対して様々な態度を持つ属性が存在することが明らかとなった。 本研究で行ったアンケート調査の対象者は、自動車利用者を対象としており、日本の人口を代表するような方法では抽出していないことに留意する必要があるが、全体の半数以上が自動運転の普及に賛成またはやや賛成と回答し、反対またはやや反対が2割であることは、自動運転の普及に向けては心強い結果であると言える。そして、普及反対群が抱く自動運転に対する心配する事柄についても、本研究でその一端を明らかにすることができた。これらの知見をもとに次節では、さらに自動運転の普及に賛成する人を増やし、受容性を高めるための方策について考える。 6-6.自動運転の社会受容性醸成方策 (1)Rogersのイノベーション普及理論と各クラスターの対応 自動運転は、従来の社会には存在せず、その普及により社会に大きなインパクトを与えることでイノベーションを引き起こすことが期待される。E. M. Rogers81)は、イノベーションの普及について、消費者の商品購入に対する態度をもとに新し商品に対する購入の早い順から、5つのタイプに分類している。最も購入の早いグループから、Innovators:革新者、Early Adopters:初期採用者、Early Majority:前期追随者、Late Majority:後期追随者、Laggards:遅滞者の5グループである。この分類を参考にして、自動運転の普及方策について考察する。 E. M. Rogersのイノベーション普及理論(Diffusion of Innovation Theory)では、消費者のグループの数は5であり、かつ各グループを構成する比率まで明示されている(図 6-2)。一方、本研究で分類した自動運転に対する態度のグループは6であり、その比率はRogersの理論の比率とは異なる。そのため、Rogersの提案するグループとは厳密に一致しないが、イノベーションの普及が段階的に進行するという概念を援用することで、自動運転の普及方策を考察する。 81) E.M. Rogers著,青池慎一,宇野善康監訳:イノベーション普及学,産能大学出版部,1990.5.

元のページ  ../index.html#85

このブックを見る