自動運転普及がもたらす都市交通への影響調査
74/99

716.自動運転の受容性に影響する要因と普及に向けた方策に関する検討 6-1.はじめに 自動運転の社会への実装に向けて社会受容性を高めるためには、自動運転に関する情報を人々に対して丁寧に提供していくことが求められる。その際、「誰に対して」「どのような情報」を提供することが効果的であるのかがあらかじめ把握できていれば、情報提供をより効率的・効果的に行うことが可能となる。 情報提供の内容(どのような情報)を考える際には、自動運転に対して肯定的な考えを持つ人の自動運転に対する意識や、逆に否定的な考えを持つ人の自動運転に対する意識を踏まえることが重要であろう。 そこで、自動運転の社会受容性を醸成に向けた知見を得るため、自動運転に対する人々の様々な意識を調査し、自動運転に対する賛否意識や、それに影響する様々な自動運転に対する態度などの要因の分析を行う。そして、分析結果をもとに、自動運転の社会受容性を醸成するための方策を考察することを目的とする。 本章の構成は次のとおりである。まず、第2節において、自動運転をはじめとするまだ普及していない乗り物に対する社会受容性やその評価方法についての研究成果についてレビューし、本研究の特徴を示す。続いて、本研究で行ったアンケート調査について説明し、その結果の概要を示す。そして、アンケート調査結果を用いて、自動運転に対する市民の様々な意見や個人属性のデータ分析から、自動運転の受容性への影響要因を分析する。その結果に基づいて、自動運転の社会受容性を醸成する方策について考察を行う。 6-2.既往研究のレビュー 自動運転のように技術的なイノベーションに対する社会受容性についての考察や、そのような技術にまつわる普及方策についての研究(環境配慮製品の普及方策)がなされている73)。 そして、自動運転のように社会に実装される前の、人々にとって未知の乗り物に対する受容性に関する研究がなされている。魚住ら74)は、近未来のパーソナルモビリティ(Future Personal Mobility)の受容性を調査し、利用意向に影響する要因や支払い意思額について研究している。また、豊田市における立ち乗り型(winglet)や三輪(i-Real)のパーソナルモビリティの試乗会で得られたアンケート結果を用いた、それらの乗り物に対する受容性についての研究もおこなわれている例えば、75,76)。 73) 西尾チヅル:環境配慮型社会形成におけるマーケティングの役割と課題,第3回横幹連合コンファレンス,2C1-5,2009.12. 74) 魚住明未,三輪富生,森川高行,山本俊行,河合菊子,西村良博:近未来型個別モビリティの受容性に関する基礎的研究,土木計画学研究・講演集,Vol.38,CD-ROM,2008.<再掲> 75) 西堀泰英,李昂,加知範康,河合正吉,安藤良輔:パーソナルモビリティに対する市民意識-パーソナルモビリティ見学者の視点から-,土木計画学研究・講演集,Vol.43,CD-ROM,2011.<再掲> 76) 李昂,安藤良輔,西堀泰英,加知範康,加藤秀樹:立ち乗り型パーソナルモビリティの 受容性に関する研究,土木学会論文集D3 (土木計画学), Vol.68, No.5, 2012.<再掲>

元のページ  ../index.html#74

このブックを見る