自動運転普及がもたらす都市交通への影響調査
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615-3.ADASの効果に関する分析 5-3-1.AEBSの交通事故回避効果の分析 (1)分析の考え方と留意点 AEBSの交通事故回避効果を把握する考え方は次のとおりである。 Webアンケートでは、モニターの交通事故経験について、人身事故・物損事故の経験について「過去5年以内にある」「5年以上過去にある」「一度も経験がない」を質問している。また、AEBSを搭載していることにより交通事故回避に効果があった経験(回答者の主観的な判断に基づく)も質問している。これらの結果を用いて、AEBSによる交通事故被害抑制効果を分析する。 分析の考え方は次のとおりである。文章中の①~⑤は表 5-1(次ページ)の番号に対応している。 • AEBS搭載者(①)に着目し、5年以内に交通事故経験のある人(②)を抽出する • AEBSを搭載していることで交通事故回避に効果があった経験のある人(③)を抽出する • ②または③の経験を持つ人を「事故リスク遭遇者」(④)とし、交通事故被害抑制効果を算出する際の分母とする • ③の事故回避効果経験者数を④の事故リスク遭遇者数で除すことで、AEBSによる交通事故回避率を算出する ここでの分析は、Webアンケート調査に基づくものでありいくつかの留意点が存在する。以下に整理する。 • モニターに質問した事故経験は、人身事故・物損事故の両方である。一方、自動車メーカーが発表する事故削減効果の分析に用いているのは、人身事故である。そのため両者の単純な比較はできない • ここでの分析では、交通事故件数ではなく、交通事故経験者数という人数ベースの分析をしているため、上と同様にメーカーが発表する数字との単純な比較はできない • 交通事故経験を、過去5年以内と5年以上過去に区切って質問している。一方、AEBS搭載者の94%が2015年以降に車両を購入しており、事故経験の期間とAEBS効果発揮期間が一致していない。そのため、AEBSによる事故削減効果を過小評価する可能性がある 以上のような限界があるものの、様々な観点からAEBSの効果評価を行うことはAEBSの効果を理解する点や今後の普及を促す観点からも重要と考え、分析を行う。

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