自動運転普及がもたらす都市交通への影響調査
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11.はじめに 1-1.研究の背景 現在の社会は様々な問題を抱えている。都市交通に関係するものに限定しても、進展する高齢化、それに伴い増加する高齢者の交通事故、拡大する低密度市街地、交通不便地域のモビリティ確保など、枚挙に暇がない。そして、都市交通において重要な役割を担っている自動車についていえば、産業面からの国際競争力の維持・増進や、社会イノベーションの誘発・促進が課題となっている。 こうした問題や課題に対するソリューションのひとつとして、自動運転の実現が期待されている。例えば、運転支援システム高度化計画(2013)1)では、自動運転の効果として次の5点、すなわち、①渋滞の解消・緩和、②交通事故の削減、③環境負荷の低減、④高齢者等の移動支援、⑤運転の快適性の向上、が示されている。また、内閣府が中心となって進めているSIP-adus(Cross-ministerial Strategic Innovation Promotion Program Automated Driving for Universal Service :戦略的イノベーション創造プログラム 自動走行システム)2)では、「安全」を第一義において研究開発が進められている。さらに、第10次交通安全基本計画(2016)3)では、基本理念に先端技術を積極的に取り入れることを明記されている。 このように、自動運転は様々な面で期待されている。その一方で、国土交通省と経済産業省が協働で開催している自動車ビジネス検討会の今後の取組方針(2016)4)では、自動運転が都市交通の一部として普及するには、社会が自動運転を受容することが必要であり、そのためには「自動運転の効用や機能・限界等に関する国民理解の促進」等が重要であると指摘されている。受容性の重要性については、SIP-adusの開発計画2)の中でも示されている。 社会が自動運転を受容するには、自動運転が期待されている光の面だけでなく、不安や懸念を抱かれている誤作動、交通事故等の影の面についても認識し、そうした問題への対処法を示すことが重要である。 1) 運転支援システム高度化計画策定関係省庁連絡会議(警察庁、総務省、経済産業省、国土交通省、内閣官房):運転支援システム高度化計画,2013.10. 2) 内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当):戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)自動走行システム研究開発計画、2016.10. 3) 中央交通安全対策会議:第10次交通安全基本計画 交通事故のない社会を目指して:2016.3. 4) 自動走行ビジネス検討会:自動走行ビジネス検討会今後の取組方針,2016.3.

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