自動運転普及がもたらす都市交通への影響調査
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313-4-7.自動運転の光と影の整理を踏まえた考察 以上で整理した光と影を、一覧表にして整理する。 表 3-2 自動運転の光と影の整理 分野光/影/課題具体的内容実装に向けた課題課題•倫理上の課題•ジュネーブ条約•事故発生時の責任問題•社会受容性の醸成交通安全光•交通事故抑止、削減•事故率減⇒安全基準緩和⇒車両軽量化⇒燃費向上影•自動車利用増加による交通事故増加•機械誤作動や不適切操作による交通事故の懸念•一般車と自動運転車の混在による交通事故の懸念交通円滑化光•周辺車両との協調運転等による渋滞緩和•運転中のセカンドタスクによる渋滞問題の縮小影•自動車利用増加による渋滞悪化の懸念•自動運転の悪用(駐車料金を逃れるための路上回遊など)による渋滞悪化移動手段確保光•自動運転による免許非保有者の移動手段の確保•自動運転車と既存公共交通機関の適切な役割分担による既存公共交通の利用増加•自動運転車による運転手不足の解消影•自動運転の過度な普及による既存公共交通の収益悪化•自動運転利用サービスの有無や利用料金高止まりによるモビリティ格差拡大•自動運転車の過度な普及による職業運転車の雇用縮小環境光•環境的に最適な運転制御による環境負荷削減影•自動運転車の過度な普及による環境負荷の増加都市(土地利用)光•バレーパーキングと駐車場再配置による土地利用の高度化•都市内の物流車両等の拠点分散化による土地利用の高度化•モビリティ向上によるまちへの来訪増加やそれによる街の活性化影•過度な自動車利用の普及による都市の低密度化•協調型(インフラ強調等)システムや自動運転に求められる道路維持管理コストの増大、高精度地図作成コスト負担増大等によるインフラ整備コストの増大 以上でみてきたように、自動運転の光と影の多くが表裏一体の関係にある。すなわち、自動車が移動の利便性を飛躍的に向上させただけでなく外部不経済を生み出したように、自動運転もまたそのようになる可能性がある。自動運転の外部不経済(影)をできるだけ小さくするためには、普及の前から様々なルールを整えておくべきである。 しかしながら、自動運転の利便性(光)は自動車と同様に大きく、その光をできるだけ早く利用者が享受できるようにすることも重要である。光の部分を最大化し、影の部分を最小化するためには、自動運転を野放図に普及させてはいけない。ルールの整備を急ぐか、普及に合わせてルールを整える必要がある。 そのためにも、自動運転を「21世紀のモンスターとしないような対応、賢い育て方」が求められる。はじめから完璧なルールを整備することは困難であり、現実的には後者となるにしても、ルール整備の見直しや、新たな技術的進展のシステムへの反映が妨げられることがないよう配慮すべきだろう。

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