自動運転普及がもたらす都市交通への影響調査
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283-4.既往研究等に基づく自動運転の光と影の整理 自動運転は、現在の社会や都市交通が抱える様々な課題を解決する可能性を持つ一方、副作用のように負の効果をもたらす可能性も指摘されている。すなわち、自動運転には光と影の部分が存在する。また、自動運転が実現するためには様々な問題が残されている。 ここでは、以上の既往研究等を踏まえ、自動運転の実現に向けて乗り越えるべき問題を整理するとともに、自動運転の光と影について整理する。自動運転の光と影は、交通安全、交通円滑化、移動手段確保、環境負荷、そして都市(土地利用)の観点から整理を行う。 3-4-1.自動運転の実現に向けて乗り越えるべき問題 自動運転の実現に向けては、技術的課題だけでなく社会受容性の問題や、倫理、法制度、事故発生時の責任の問題があることが指摘されている。これらの問題については、本報告書第4章以降に於いて検討するので、ここでは詳細は割愛する。 3-4-2.交通安全の面からみた光と影 (1)光の側面 • 交通事故抑止、削減:自動運転技術により自動車の安全性能が向上し、交通事故の抑止や交通事故削減に寄与する可能性がある56) • 燃費向上・車両価格低下:交通事故抑止や削減による副次的な効果として、安全基準緩和されることにより車両が軽量化することで燃費向上、あるいは材料や装備類が低廉化することで車両価格が低下する可能性がある57) (2)影の側面 • 交通事故増加:自動運転により自動車の利便性が向上し、その結果自動車利用が増加することによる交通事故増加58) • 交通事故発生の懸念:機械の誤作動や自動運転車に不慣れな運転者による不適切操作、あるいは自動運転車と人が運転する自動車の想定外の挙動による交通事故発生の懸念59) 56) 例えば内閣府のSIPでは自動運転開発の目的の第一義に交通安全の実現を挙げている 57) 例えばZia Wadud, et al.:Help or hindrance? The travel, energy and carbon impacts of highly automated vehicles, Transportation Research Part A 86 (2016) 1-18.<再掲> 58) 例えば57)の知見を元にした筆者の想定 59) 例えば独立行政法人交通安全環境研究所:平成27年度講演会 講演概要,2015.7.

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