自動運転普及がもたらす都市交通への影響調査
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233.既往研究等 本章では、自動運転に関する既往研究や、関連する報道や行政発表等について整理する。自動運転とそれを取り巻く現状を概観した文献、自動運転等の普及やその影響を予測した文献、自動運転に対する受容性について評価した文献、そしてその他の文献に分類して整理する。 3-1.自動運転とそれを取り巻く現状を概観した研究 自動運転への期待や社会実装に向けた留意点等については、これまで数多くの成果が蓄積されている。例えば、太田(2015)は自動運転の現状と将来に関する考察の中で、現在の交通を取り巻く状況を踏まえ、これからの社会経済と交通について概観し、自動運転と交通社会についての展望やその課題を述べている31)。また、太田(2015)は、自動運転の普及による交通,社会への影響や備えるべきリスクについて展望している32)。これらの太田の論考に先立って、津川は自動運転システムの機構やその発展の経緯、自動運転システムのニーズと課題について、特にトラックの隊列走行に焦点をあてて、自動運転システムを展望している33)。須田らは、新たなモビリティ社会の実現に向けての課題として、自動運転技術やセンシング技術だけでなく、車両制御以外の様々な課題があることを指摘している。それらの課題として、HMI(Human Machine Interface)、一般交通への影響を抑えるための他車両の運転手や歩行者に対する受容性評価、そして利用者のメリットだけでなく社会制度との適合性も含めた社会受容性を確保する必要を指摘している34)。 以上の文献は、2015年以前の経過の中で、自動運転の全般的課題や展望について様々な切り口から論考されたものである。それに対し、太田(2017)は2016年の動向も取り入れた展望を発表している35)。ここでは、自動運転のレベルに対する言及がなされており、我が国のレベル1~4やSAEのレベル0~5などの技術開発の視点だけでなく、利用者や交通需要者の視点からの分類も必要と指摘している。すなわち、完全自動運転でもオーバーライドできる場合とできない場合で分類することや、完全自動運転車と通常自動車が混在する状態と完全自動運転車のみが走行する状態に分類することなどである。また、全米都市交通担当者協会(NACTO)が出した自動運転に関する勧告や、IoTやビッグデータを活用して顧客(人や物)の移動ニーズを満たすという考え方のMaaS(Mobility as a Service)についても言及しており、今後の自動運転の姿を幅広く展望している。 31) 太田勝敏:自動運転時代の交通とその社会,IATSS Review,Vol.40, No.2. 2015.10. 32) 太田勝敏:自動運転が拓く明日の交通社会を考える,交通工学,Vol.50, No.2. 2015. 33) 津川定之:自動運転システムの展望,IATSS Review,Vol.37,No.3,2013.1. 34) 須田義大、大口敬,中野公彦,大石岳史,小野晋太郎,吉田秀範,杉町敏之:自動運転システムの社会実装に関する課題と展望,生産研究,Vol. 68,No. 2,2016. 35) 太田勝敏:自動運転と交通まちづくり、自動車技術,Vol.71,No.1,2017.

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