高齢者モビリティの選択要因と支援方策に関する研究
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61 4.おわりに 本研究は、高齢者の主要な移動手段である自動車に着目し、高齢ドライバーの運転特性等の分析と免許返納後の移動を支える連携方策の検討を行った。 生活の中心にある「自動車」は私たちに様々な恩恵をもたらし、豊かな生活の象徴でもある。しかし、地域の商店や公共交通が閉店・廃線となって自動車が無ければ生活できない地域も見受けられ、さらに、今後75歳以上の高齢者が爆発的に増えることから高齢ドライバーの事故が増加する可能性がある。 この様な状況下、今後の高齢者モビリティを考えるうえでの重要なポイントは、『高齢者自身が上手く自動車と付き合っていく』ことと、『自動車の安全運転技術を含めて様々なサービスを有機的に機能させる社会システムへの変革』が必要であると考える。 『高齢者自身が上手く自動車と付き合っていく』ためには、自身の運転状況を客観的に確認する必要がある。その方法は、家族・友人からの指摘、免許更新時の高齢者講習、高齢ドライバーの安全運転技術講習会、運転時認知障害早期発見チェックリスト30などが活用できよう。しかし2章で取り上げた免許更新時の高齢者講習結果は、免許更新に必要な講習(受けさせられている、受動的な講習)としての意識が強く、自身の運転継続への参考として活用するまでには至っていない。今後は、免許更新にあたって自身の運転能力を確認・評価する能動的な講習へのシフトチェンジが求められる。 次に、『自動車の安全運転技術を含めて様々なサービスを有機的に機能させる社会システムへの変革』であるが、先述のように自身の運転状況を客観的に確認することができれば、運転能力の課題を補完する技術(ADAS)の登載を検討できる。さらに、自動車での生活の全てを他の移動手段で代替することは難しいため、生活活動を細分化して、活動毎に利用できる移動手段を意識しておくことが肝要である。この様に、自動車からの卒業を意識した生活の想像・他の移動手段の利用経験を促すためにも、地方自治体や民間会社が実施している様々なサービス(移動・診療・販売‥)を連携させるため他業種・他分野の連携が必要であり、これらのサービスを有機的に機能させる社会システムへの変革が望まれる。 【自身の運転状況を客観的に確認】「免許更新に必要な講習」から「免許更新にあたって自身の運転能力を確認・評価する講習」へシフト高齢ドライバー自身の運転の能力を補完する技術(ADAS)の登載自動車運転の卒業:公共交通利用、福祉交通利用、歩いて暮らせる生活…自動車以外の移動手段・その他サービスの情報収集自動車を使わない生活の経験これまでの社会

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